サトウキビ収穫作業の労働力不足を懸念(フィリピン)
最終更新日:2020年8月31日
9月からの本格的な製糖シーズン開始を前に、フィリピンではサトウキビ収穫作業の労働力不足が懸念されている。
現地報道は8月10日、同国内では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大が依然続くなか、州を越える移動の制限により、サトウキビ収穫時における労働力不足に直面する可能性があると伝えた。
国内の主産地である西ビサヤ地方のパナイ島やネグロス島では、サトウキビの収穫作業を担う労働者の多くは他の地域からの出稼ぎ労働者で、例年5000〜6000人の出稼ぎ労働者がサトウキビ収穫作業に従事しているが、今年はフィリピン政府が発表したガイドラインにより、州をまたいでの移動には警察署が発行する移動許可証が必要で、その確保が困難になっている。このため、両島の砂糖生産者協会連合会(CONFED)ネグロス・パナイ支部は8月7日、出稼ぎ労働者はこの地域の農業活動全般にとって必要不可欠な存在であるとし、労働者の円滑な移動を確保するよう政府に求める声明を発表した。
サトウキビの収穫は、初期投入コストという経済的な問題に加え、地盤が軟らかく、外国製の大型機械を導入すると地盤が沈降するといった理由から、現在でも手刈りが一般的で、同国における収穫機導入率は低い。一方で経営規模が比較的大きい農場では、労働力不足から機械導入を求める声も多く、日本でも使用されている小型の収穫機に対する関心が高まっている。
なお、日本政府は、サトウキビ生産者が使用するトラクターやサトウキビ収穫用アタッチメント等の農業機械の調達を対象とした8億円規模のODA(政府開発援助)による無償資金協力(調達資金供与)を令和2年度に実施すると発表している。当支援は、同国のサトウキビ産業の生産性の向上と所得格差の是正を図り、もって社会の安定化を通じた同国の経済社会の発展に寄与することを目的としており、現地報道によると同国の製糖業者はこの資金援助を歓迎しているということであった。
【水野 崇 令和2年8月31日発】
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