欧州委員会は9月14日、欧州連合(EU)と中国が地理的表示(GI)の保護を相互に認める二国間協定に署名したと発表した。
欧州委員会のヤヌシュ・ボイチェホフスキ農業・農村開発担当委員は、「中国のような世界的な貿易相手と緊密に連携するという方針に沿って、本協定が発効に一歩近づいたことを誇りに思う。その品質および多様性で名高い欧州のGI産品の真正性を確保し、評価を維持するためには、EUおよび世界レベルでの保護が重要である。今回の合意は、これに貢献するとともに、我々の貿易関係を強化し、双方の農産品・食品部門および消費者に利益をもたらすことになる」と述べている。
GIに関するEUと中国の協力は2006年から始まり、2012年にそれぞれの10品目のGIが相互に保護されていた。
今回の保護対象は100品目ずつとなり、EUの内訳はワインが54品目と最も多く、チーズは14品目、食肉加工品は3品目となっている。国別に見ると、イタリアが26品目、フランスが25品目で、両国の産品だけで半分を占める。
本協定は、EUと中国が2019年11月に政治合意していたものであり、今後EU側では、欧州議会での承認の後、EU理事会(閣僚会議)で採択されることにより、2021年初めの発効が見込まれている。また、発効後4年以内に、同様の登録手続きを経た上で、双方で175品目が追加される予定となっている。
欧州委員会によると、2019年のEU産農産品・食品(Agri-Food:ワインや蒸留酒を含む)の中国向け輸出額は、145億ユーロ(1兆8270億円:1ユーロ=126円)となっている(図)。これは、EUの総農産品・食品輸出額の8.0%を占め、英国、米国に次ぐ第3位、GI産品に限れば第2位の輸出市場となっている。欧州産品は中国市場において高い成長が期待できる、と、欧州委員会は見ている。
なお、EUの中国産農産品・食品輸入額は53億ユーロ(6678億円)となっている。これは、EUの総農産品・食品輸入額の4.4%を占める。
欧州委員会によると、EUでは3300品目以上の農産品・食品がGIに登録されている。GIにより、特定の産地と伝統的な製法に結び付いた独自の特徴を有する産品の名称を知的財産として保護し、その振興を図ることを目的としている。なお、EUにおけるGI市場は約748億ユーロ(9兆4248億円)で、EU食品・飲料市場の6.8%の規模に相当し、GI産品の輸出額は169億ユーロ(2兆1294億円)で、食品・飲料輸出額の15.4%に相当する。また、今回のような二国間協定により、EUではEU域外産の約1250品目(日EU経済連携協定発効時に保護された日本産56品目を含む)のGIが保護されている一方、世界中の貿易相手国では延べ約4万品目のEUのGIが保護されている。