欧州委員会、砂糖の短期的需給見通しを公表(EU)
最終更新日:2020年11月10日
欧州委員会は2020年10月5日、9月中旬までの市場情報に基づき、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大によって急速に変化する状況や影響などを可能な限り反映した農畜産物の短期的需給見通し(注1)を公表した。このうちの砂糖の需給見通しの概要について紹介する。
なお、EU・英国間においては、将来の貿易環境がどのように変化するか不確定であるものの(参考)、農畜産物の関税や非関税障壁が発生しない現在と同じ条件であることを仮定し、欧州連合(EU)離脱の移行期間にある英国(注2)を含まないEU加盟27カ国を対象としている。
(注1)欧州委員会は、農畜産物の短期的需給見通しを年3回(晩冬、初夏、初秋)、中期的需給見通しを年1回(12月)公表している。
(注2)英国は現在、EU離脱(BREXIT)したものの、EU法の適用下の「移行期間」にある。移行期間は2020年12月31日に終了予定。
<2019/20年度、EUと英国の輸出量が最低水準に>
2019/20年度(10月〜翌9月)のEUと英国を合計した砂糖生産量は、前年度を23万トン下回り、過去5年平均を3%下回る1740万トンになると見込まれている。
EUと英国の砂糖平均価格は、今年度前半に上昇し、今年度後半の数カ月は1トン当たり380ユーロ(4万6740円:1ユーロ=123円)前後で安定していた(図1)。一方、国際価格は7月に再び下落し、3月以降はEU・英国価格と国際価格の差は、同50ユーロ(6150円)から70ユーロ(8610円)の範囲で拡大した。
同年度の砂糖消費量は、外食産業の営業停止などCOVID-19の拡大防止措置の影響などにより、前年度比2.5%減に相当する50万トン程度の減少が見込まれている。
また、EUと英国を合計した同年度の砂糖輸出量は、同地域での生産量の減少、国際需要の減少、国際価格の安値傾向などから、低水準にとどまっており、2010/11年以来の最低水準である80万トンになると見込まれている。なお、輸入量は185万トンと、前年度を3%程度下回るとみられる。
この結果、EUおよび英国の期末在庫量は同22%増の220万トンと見込まれている。
<2020/21年度、降水量不足などで減産の見通し>
2020/21年度のEUにおけるてん菜の単収は、西部地域での降水量不足およびテンサイ萎黄病の影響により、5年平均をわずかに下回る1ヘクタール当たり73トンと見込まれている(図2)。同年度のEUのてん菜作付面積は、150万ヘクタールになるとみられ、生産量は前年度比3%減の1億900万トンと見込まれている。
この結果、平均ショ糖含有率を用いた同年度の砂糖生産量は、前年度の1620万トンより1.9%少ない1590万トンとなることが見込まれている。
一方、同年度の消費量は、COVID-19の影響によって落ち込んだ前年度からの回復が見込まれ、2018/19年度の水準にまで近づくと見込まれている。
また、同年度の輸入量は前年度並みになると予想される一方、輸出量は増加して120万トンに達する可能性があると見込まれている。
欧州委員会は報告の中で、COVID-19の農業・食品部門へ与えた影響を考慮することが今回の課題であったとした。また、COVID-19により、電子商取引による食品販売の増加や、地産地消の進展などの食品システムへの変化があったとする一方、COVID-19の第二波の程度や経済的影響を緩和するために各加盟国が措置する対策の成否など不確定要素が多くあることから、2021年の景気回復の展望や農業市場への影響等を見通すことには注意が必要であるとしている。
【調査情報部 令和2年11月10日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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