タイ産鶏肉の中国向け輸出、RCEP協定の恩恵は軽微(タイ)
2020年11月15日、ASEAN10カ国のほか日本、中国、韓国、豪州およびニュージーランドが参加国となる地域的な包括的経済連携(RCEP)協定(以下「RCEP協定」という)が署名された。本協定は、世界のGDP、貿易総額及び人口の約3割(日本の貿易総額のうち約5割)を占める地域の経済連携協定であるが、本協定署名を受け、タイ国際貿易交渉局はRCEP協定の概要をウェブサイト上(注)に公表し、該当地域との貿易を想定している業者は関税を確認しておくよう推奨した。
本協定が発効すると、中国が輸入するタイ産冷凍鶏肉について、基本税率である10%の関税は協定発効の初年度に即時撤廃される(表)。中国は2018年以降、タイから手羽やもみじ(鶏足)を中心とした冷凍鶏肉を輸入しており、2019年のタイからの輸入量は7万987トンと全世界からの輸入量の9.2%を占めていた。その後中国ではアフリカ豚熱の発生に伴う豚肉生産量の減少により鶏肉の代替需要が増加したため、2020年1〜10月の冷凍鶏肉輸入量は前年同期比で約2倍の122万4638トン、このうちタイ産は同81.2%増の9万9727トン(シェア8.1%)と、国別シェアでは減少しているものの同国からの輸入量は増加傾向にある。
しかしながら、タイ現地専門家や輸出企業は、RCEP協定の恩恵は軽微であると捉えている。これは、中国から認定されている鶏肉輸出施設が、2020年12月17日時点で23カ所と多くはないことや、施設認定の審査や手続きが複雑なため新規認定に時間を要することから、関税が撤廃されてもすぐに輸出量が急増することはないと考えられるためである。
【寺西 梨衣 令和2年12月23日発】
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