アフリカ豚熱拡大などにより、豚肉および鶏肉の小売価格上限を設定(フィリピン)
フィリピンのドゥテルテ大統領は2月1日、マニラ首都圏の豚肉および鶏肉の小売価格に上限を定める大統領令に署名した。この大統領令の効力は同大統領が期間を延長しない限り60日間とされている。設定された上限価格は豚肉の肩ロース、ももが1キログラム当たり270ペソ(629円)、ばらが300ペソ(699円)、丸鶏は1キログラム当たり160ペソ(373円)となった。
同国では緊急事態や災害時もしくは人為的な要因によって不合理に生活必需品や主要な物品の価格上昇が引き起こされるような事態に陥った場合、関係機関もしくは価格調整協議会の勧告に基づき、大統領が生活必需品や主要な物品の小売価格の上限を定めることができるとされている。同大統領令には官報もしくは一般紙への掲載後ただちに施行される旨が記載されており、官報には2月1日に掲載されているが、地元紙によると同月8日から施行されたものとみられる。
フィリピン国内ではアフリカ豚熱が拡大し、豚肉生産量の減少等により供給量が不足していることが、豚肉価格の上昇の背景にあるとみられる。フィリピン統計庁によると、同国における豚の飼養頭数は、2021年1月1日時点で前年比24.1%減の972万頭となり、直近25年間で最低の水準となった。豚肉価格の上昇に引きずられるかたちで鶏肉の価格も上昇しており、消費者の家計を圧迫している。1月の小売価格は豚肉(ばら)が同379〜403ペソ(883〜939円)、丸鶏が同180ペソ(419円)弱で推移しており、上限価格は豚肉に厳しい設定となっている(図)。
鶏肉の生産者協会会長は「この価格帯では生産者は利益を確保できない」とコメントしており、生産者数の減少および生産力の低下が懸念されている。
また、フィリピン統計庁によると、2021年1月の消費者物価指数(2012年=100とする)は127.8となり、前年同月比4.2%増、前月比1.3%増と高水準で推移している(フィリピンの消費者物価指数の算出方法では、食品・非アルコール飲料の価格の占める比重が高いため、同国政府は消費者にとってセンシティブなインフレ率の抑制策として、食品価格を抑制しようとする傾向がある。)。1月の消費者物価指数の上昇率を品目別でみると食品・非アルコール飲料が前年同月比6.2%増となっており、アフリカ豚熱拡大による豚肉価格の上昇や流通コストの増加が主な要因と見込まれている(表)。
なお、本稿中の為替レートは、1ペソ=2.33円、(2021年1月末日TTS相場)を使用した。
図 豚肉(ばら)および鶏肉(丸鶏)の小売価格推移(週別)
資料:フィリピン統計庁
注:鶏肉(丸鶏)の10月第2週の価格はデータ無し。
表 品目別消費者物価指数の推移
資料:フィリピン統計庁
注;指数は2012年を100とする。
【海老沼一出 令和3年2月18日発】
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