<EUの持続可能目標:シェア25%>
欧州委員会は、持続可能な社会への移行を最優先政策とし、2020年5月に農業・食品部門に関する「Farm to Fork(農場から食卓まで)」戦略(注2)を発表し、その中で農薬や肥料使用量の削減などのほか、野心的な目標の一つとして「2030年までに有機農業の取組面積を25%以上に拡大すること」を掲げている。
(注2)alicセミナー(2020年12月14日開催)「EUの『Farm to Fork(農場から食卓まで)』戦略について〜2030 年に向けて、持続可能性(サステナビリティ)を最優先課題とするEU農業・食品部門〜」
<目標達成の実現可否について:現地アナリストの指摘>
そのような中での今回のEurostatの発表となったが、現地の農業専門アナリストは「25%」の達成に十分な成長速度にないと指摘している(図2)。同アナリストは、このままの成長でいけば2030年は15〜18%にとどまるであろうと予測し、今後、加速度的に取組面積を増加させる必要があるとしている。同アナリストは、欧州委員会の一部の関係者が「シェアの低い国の底上げにより必要とされる全体的な成長を実現したい」としているものの、それらの国々の成長度合いは比較的低く、現実的ではないとしている。
一方、取組面積でみると、最も大きいのはスペイン(EU全体の有機農業取組面積の17.1%)で、フランス(同16.2%)、イタリア(同14.5%)、ドイツ(同9.4%)が続き、この上位4カ国で過半を占めている。これらの国々では、取組面積が継続して増加していることから、さらなる拡大が持続可能目標の達成には現実であろうとみている。ドイツ農務省は現在の増加傾向を維持するため、サプライチェーン全体を対象とした24項目の措置を含む新たな戦略を導入し、2030年までにシェアを20%まで引き上げることを目標としている。