欧州委員会は、3月8日の国際女性デーに合わせ、欧州連合(EU)における女性の農場経営者数が近年増加傾向にあり、この割合がEU全体で29%(2016年時点)になったことを発表した。
加盟国別にみると、ラトビアとリトアニアがそれぞれ45%と最大であり、次いでルーマニア(34%)、エストニア(33%)とバルト三国の他、旧東欧地域で高い割合となった(図)。一方、養豚、酪農、園芸を中心とした主要な農業国であるオランダが5%と最小となった他、養豚、酪農が盛んなデンマークも8%にとどまるなど加盟国間で大きな格差が見られた。欧州委員会は、同割合の加盟国間格差を深刻な問題と認め、農業の魅力を次世代の生産者に伝えることが重要であるとしている。
また、EUの農業部門は高齢化が進んでいるが、女性農業従事者についてはこの傾向が一層顕著になっている。欧州委員会によれば、女性農業従事者のうち35歳未満の者はわずか4.2%である一方、65歳以上の者が42%となっている。男性の65歳以上の者が29.2%であることを考えると、農業におけるジェンダーギャップ(男女差)は今後も拡大する可能性があるとみられる。
そのような中、欧州委員会は、共通農業政策(CAP)の下では各加盟国が農村開発計画策定の際に農村部の女性の状況を考慮することが求められており、ジェンダーギャップに取り組んでいること、一般的な価格・所得政策を通じた新規就農者支援にとどまらず、若年層の女性の就農支援のための農村振興資金が提供されていることを強調した。なお、その優良事例として、ハンガリーの女性養豚生産者<参考>に対して、作業効率向上に資する農場の近代化のための設備導入費への融資や、イタリアの有機青果生産者に対する土地購入費への融資などを実施してきたことを紹介している。
さらに、EUは国際女性デーに際し、欧州の農村地域が競争力を持ち続け、活気と地域活性化の場であり続けるよう支援するだけでなく、次世代の生産者や農業関係者にとって、欧州のジェンダーバランスがより良いものになるよう努力するとした。
<参考>
優良事例の一つとして紹介された養豚生産者については以下のレポートにて経営概況などを紹介しているのでご参照いただきたい。
・畜産の情報2021年2月号「新型コロナウイルス感染症がEU畜産業界に与えた影響について〜グリーンリカバリーと見直される農業のあり方〜(コラム2 COVID-19と向き合う生産者:ハンガリーの養豚生産者)」