ニュージーランド(NZ)のオコナー農業大臣は2021年4月14日、猶予期間を最長2年とする、海上輸送による生体家畜輸出の禁止を発表した。
本発表によると、この決定は、アニマルウェルフェアに関するNZに対する高水準の評価を維持するためのものであり、世界でアニマルウェルフェアへの監視の目が強まる中、同国は先んじて行動する必要があるとしている。
NZの第一次産業省が2019年に開始した生体家畜の海上輸送に対するレビューでは、さまざまな意見が出されたが、アニマルウェルフェアの問題について大臣に助言する第三者機関である国家動物福祉諮問委員会(NAWAC:National Animal Welfare Advisory Committee)は、当該海上輸送を禁止すべきと助言している。同農業大臣は、ここ数年で輸送環境の改善は進んできているものの、関係者の最大限の努力にも関わらず、未だに北半球市場への航海日数の長さは、アニマルウェルフェア上の大きな課題であるとしている。
また、本決定により、一部の生産者や輸出入業者が影響を受けるが、同農業大臣は猶予期間の設定により適応可能としている。2015年以降のNZの第一次産業の輸出額に占める海上輸送での生体家畜の輸出額は、約0.2%に過ぎない。同農業大臣は「生体家畜輸出により一部の生産者は経済的利益を得ているが、それは他の生産者に広く行き渡るものではない」とし、また、「貿易相手国との関係を重視し、猶予期間中における相手国との協力を約束し、また、最先端の科学技術を通して、別途、乳用牛の凍結精液および受精卵の貿易を促進する機会を設けている」と述べ、この決定に至るまでに、NZ当局が主要貿易国との間で協議を進めてきたことにも言及している。
なお猶予期間中の海上輸送においては、輸出業者に対し、2020年9月の家畜輸送船遭難事故(注)後に導入された下記追加要件の充足が要求されている。
・NZに入港する家畜輸送船に対して重点的に実施される、NZ海事局(Maritime New Zealand)による海上検査への対応
・豪州の新基準に合わせて、船舶の飼養密度を現行の90%に制限
・航海中の獣医師による毎日の報告を含む、航海報告要件の追加
・予期せぬ航海の遅延に備えて、最低飼料必要量を20%以上引き上げ
また、同農業大臣は同国第一次産業省に対し、猶予期間中におけるアニマルウェルフェアについてさらなる助言を求めていくとしている。
(注)NZから中国に向けて生体牛6000頭弱を積載していた輸送船が、鹿児島県奄美大島沖で遭難、転覆した事故(併せて乗員41名も行方不明)。この事故を受け、NZではアニマルウェルフェアの観点から生体家畜の輸出に対する批判の声が上がっていた。
(参考)ニュージーランドおよび中国における生体牛貿易状況