コロナ禍でも2020年の国内砂糖販売量が15%増加(南アフリカ)
最終更新日:2021年4月21日
南アフリカでは、新型コロナウイルス感染症(COVID−19)の感染拡大による都市封鎖などの厳しい規制が行われたにもかかわらず、2020年の国内の砂糖販売量は前年比で15%増加したと、3月12日に行われた会議で同国貿易産業競争相が述べた。
ウェブ形式で開催された同会議では、サトウキビ農家や製糖業者のほか、小売業者、食品製造業者などが参加し、2020年11月に政府の関係閣僚及び砂糖業界関係者により策定された「砂糖産業の基本計画」の実施状況が報告された。報告によると、危機的状況にあると言われていた同国の製糖業は、コロナ禍にありながら、小売業と清涼飲料メーカーを含む食品製造業の双方からの発注が増加したことから、復活の兆しを見せたとしている。
同計画では、小売業者と食品製造業者は、製糖業者との年間最低取引量に同意しており、初年度は各業者における砂糖の仕入量全体に占める南アフリカ産砂糖の割合を80%以上、3年目の2023年までには、同国産割合を95%まで引き上げることとしている。一方製糖業者は、同計画の期間中の価格抑制を行うとともに、製糖企業における収入源の多様化を目指し、業界の管理下で砂糖産業の再構築プロセスを開始するとしている。
また、大手清涼飲料メーカー(コカ・コーラビバレッジズ南ア社)は、黒人経済エンパワーメント(BEE)政策(注1)に同調し、黒人の小規模農家からより多くのサトウキビを購入する旨の契約を、砂糖取扱業者と締結したことを2020年2月に公表しており、同会議において同相はこの決定を歓迎した。
同国は、2020/21年度(4月〜翌3月)の砂糖輸出量において世界第8位であるが、2020年の国内砂糖販売量の増加による需要増で、輸出量は98万トン(前年度比32.8%減)と大幅に減少すると予測されている(表)。
一方、近年、同国では、ブラジルやアラブ首長国連邦、南アフリカ関税同盟(SACU)(注2)加盟国などから安価な砂糖の輸入が大幅に増加している。これに伴い、同国の砂糖生産量は過去20年間で25%近く減少し、この間、国内のサトウキビ農家戸数は60%減少し、砂糖産業関連の雇用も45%減少したと推計されており、同国の砂糖生産をめぐる情勢は依然として厳しい状態が続いている。
注1:BEE政策とは、黒人が南アの経済に等しく参加する権利と機会が剥奪されていたアパルトヘイト時代の「負の遺産」を克服するために策定さ れた南ア独自の黒人の経済力強化政策のこと。
注2:1970年に南アフリカ共和国、ボツワナ、レソト、スワジランド(現エスワティニ)の 4ヵ国で発足し、1990年にナミビアが加盟した関税同盟(自由貿易地域)。域内産品の無関税流通や、域外の輸入品に対する共通関税の賦課などが定められている。
【水野 崇 令和3年4月21日発】
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