EUの生鮮野菜・果物のサプライチェーンを代表する団体である欧州生鮮青果物協会(Freshfel Europe)は4月22日にプレスリリースを公表し、日EU経済連携協定(日EU・EPA)に基づき、日本向け生鮮青果物の貿易を促進するよう関係者に強く呼び掛けた。
これは、欧州委員会が4月19日から20日にかけて開催した日EUの貿易関係者などを対象に日本市場に対するEU農産品貿易を促進するためのオンラインセミナー
(注1)で呼び掛けられたもの。この中で同協会は、日EU・EPAの発効から2年が経ち、同協定の現状と将来の見通しを評価するのに適当な時期であるとして、生鮮青果物部門に対する多くの課題と新たな協定の中でビジネス成長の機会が喪失している点について意見と期待を述べた。
同協会のフィリップ・ビナード代表は「2019年当時は、日EU・EPAの発効や当時の欧州委員会のホーガン農業・農村開発担当委員による訪日
(注2)など明るい見通しでスタートした」としながらも、「EUにとって有望な市場である日本への高品質なEU産生鮮青果物の市場アクセスには大きな進展が見られない」と不満感を示した。さらに、「EUのあらゆる努力と10年以上にわたる交渉、また、日本の輸入業者が高品質で安全かつ持続可能なEUの生鮮青果物の輸入に明確な関心を持っているにもかかわらず、あまりにも多くの日本市場参入申請が留保されたままになっている」と現状の課題に触れた。
2020年の日本の生鮮野菜輸入量のうち、EU産は1万2311トンと全輸入量に占める割合は1%とわずかな量にとどまっている。同代表は、「ベルギーのトマトやイタリアのキウイフルーツなど多くの品目で、日本市場参入のための申請が留保されたままになっている」と問題点を具体的に指摘し、「日EU・EPAの多くの条項で、事前検疫検査の廃止、より多くの品種への適用範囲の拡大、臭化メチル処理をより環境に優しい取り組みで代替するなど諸手続きの見直しが必要」と今後の検討を訴えた。これは、2021年が国際連合の「国際果実野菜年」
(注3)であることから、これを機に、市場アクセス交渉で青果物を優先し、懸念されている課題を早急に解決したいとの意向を示す形となった。
最後に同代表は、「新たな二国間協定の下、今日の勢いを逃してはならない。EUは、今後数カ月の間に、日EU・EPAの新たなビジネス環境に基づく貿易を構築し、日本の輸入業者と消費者が日々の健康的な食生活の中で高品質で安全な欧州産生鮮食品を満喫できるようにするために、懸命に努力しなければならない」と今後の進展に強い期待感を表した。
EUの青果物部門は、国際基準に加えて厳格なEUの環境規制により、世界140カ国に輸出している。オンラインセミナーでは、EUの生産者や輸出業者は、高品質で安全な青果物を扱う専門知識を示し、競争力を高め、日本市場に参入するための物流網を有しているとしている。
(注1)欧州委員会オンラインセミナー「EUはどのように農産品の高い品質と安全基準を確保しているか」
(注2)海外情報「欧州委員会ホーガン委員、5月8〜11日の間、輸出事業者らと訪日予定(EU)」
(注3)当機構HP「2021年は“国際果実野菜年”です」
【小林 智也 令和3年4月28日発】