ドイツでは、2020年9月に野生イノシシでアフリカ豚熱が発生(注)して以降、主要輸出先である中国、日本、韓国向けの豚肉輸出が停止している。こうした中、デンマークの食肉最大手企業であるデニッシュ・クラウン社は4月22日、ドイツのボイゼンブルク工場の従業員360人のうち100人を解雇することで生産能力を半減させることを公表した。
ドイツ工場の生産能力縮小について同社は、日本の輸入停止措置による影響が大きかったとしている。同工場では過去20年間に渡りデンマークから生体豚を輸入し、処理加工してEU域内外に豚肉を出荷していたが、日本向けの輸出再開の見込みが立たない中で、今までの生産量を維持するのは現実的な計画ではないとしている。
同社は、「過去6カ月間、同工場で生産された製品を欧州の消費者が受け入れ可能な価格とすべく課題に取り組んできたが、早期の改善は見込めないため工場内の一部施設を閉鎖し、100人を解雇することで生産能力を半減させるという難しい決断を下さねばならなかった」としている。
ロシアによるEU産豚肉の輸入禁止措置が始まる2013年までは、同工場の製品の多くはロシア向けに輸出されていたが、同年以降、日本市場向け供給に対応すべく再投資が行われていた。同工場で生産される豚肉は隣接するデンマークから輸入された生体豚から生産されるものの、通関書類上はドイツ産の豚肉となるため、ドイツに対して輸入停止措置を講じている国々に輸出することが出来ない。そのため、同社は、日本向けに同工場で生産されていた豚肉の代替としては、アフリカ豚熱の発生がないデンマークなどの工場から供給している。
(注)
海外情報「野生イノシシで初のASF発生(ドイツ)」