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米国農務省による世界のトウモロコシ需給予測(2021年5月)

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2021/22年度の世界のトウモロコシ生産量、やや増加する見込み

 米国通商代表部(USTR)は2021年5月25日、米国-メキシコ-カナダ協定(USMCA)下でカナダが実施している乳製品輸入に係る関税割当の配分措置の是正を求めるため、同協定に基づく紛争解決パネルの設置を要請1すると公表した。
 2020年7月1日に発効したUSMCAにおいて、カナダは、米国の液状乳製品、クリーム、バター、脱脂粉乳、チーズなどに対する関税割当を協定発効6年目まで拡大し、その後、13年間は品目にかかわらず、さらに1%ずつ数量を増加させることを約束している。
 USTRによると、カナダ政府は乳製品の関税割当の一定割合をカナダ国内の加工業者に配分しており、米国の酪農家や加工業者、輸出業者がUSMCAの恩恵を最大限受けられていないとしている2。USTRは2020年12月、この問題の解決に向けてカナダ側と協議を開始したが、解決には至らなかった。
 USTRのキャサリン・タイ代表は「USMCAを完全に履行し、その恩恵をわが国の労働者が受けることがバイデン政権の最優先事項であり、この協定に基づく最初のパネル設置を要請することで、わが国の酪農産業とその労働者がUSMCA下で新たな機会をつかみ、カナダの消費者に対し米国乳製品を販売することができるようになる」とコメントしている。
 なお、USTRの公表に先立ち、全米生乳生産者連盟(NMPF)および全米乳製品輸出協会(USDEC)を含む68の団体は5月14日、USTRに対してこの問題が直ちに解決されない場合は、紛争解決パネルの設置を強く要請していた3
 今回のパネル設置に関しNMPFのジム・マルハーン会長兼CEOは、「カナダは、自国市場への参入を不適切に制限しており、USMCA下の義務を遵守していない。USTRがそれを是正しようとしていることに感謝する」と歓迎の意を表した。
 また、USDECのクリスタ・ハーデン会長兼CEOは、「長年、乳製品に関する貿易協定をカナダ側が弱体化させているという根拠のある懸念を持っており、約束を守らなければわが国の権利を守るために強固な行動に出るということを認識させる必要がある」とし、「今般のUSTRの行動は、輸出機会を最大限に活かす重要な一歩であると同時に、カナダ以外の市場に対しても将来の貿易障壁を防ぐための強いメッセージである」と評価している。
表1

2021/22年度の米国トウモロコシ期末在庫率、10%台に上昇する見込み

 USDA/WAOBは2021年5月12日、2021/22年度(9月〜翌8月)最初となる米国の主要農作物需給予測値を公表した。このうち、同国のトウモロコシ需給見通しは次の通りである(表3)。
 生産量は、作付面積と単収の増加を受けて149億9000万ブッシェル(3億8076万トン(注)、前年度比5.7%増)とやや増加が見込まれている。
 消費量は、食品・種子・その他工業向け(エタノール向けを含む)の需要が増すことで、123億1500万ブッシェル(3億1281万トン、同1.8%増)と見込まれている。
 輸出量は、ロシア産やウクライナ産との競合によって米国産のシェアが縮小し、24億5000万ブッシェル(6223万トン、同11.7%減)と記録的な輸出量となった前年度からかなり大きな減少が見込まれている。
期末在庫量は、生産量が増加する一方、輸出量が減少することから、15億700万ブッシェル(3828万トン、同19.9%増)と大幅な増加が見込まれている。その結果、期末在庫率(総消費量に対する期末在庫量)は10.2%(同1.7ポイント増)とわずかに回復するものの、2016/17〜2019/20年度の平均値を下回ると見込まれている。
 また、生産者平均販売価格は、1ブッシェル当たり5.70米ドル(627円。1キログラム当たり24.7円:1米ドル=110円)と前年度から大幅な上昇が見込まれている。

(注)1ブッシェルを約25.401キログラムとして農畜産業振興機構が換算。
表2
【塩原 百合子 令和3年5月20日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-4396