口蹄疫ワクチン非接種清浄地域として6地域を追加(ブラジル)
今回の追加で口蹄疫ワクチン非接種清浄地域は、5州全域および2州の一部へ拡大
国際獣疫事務局(OTE)は5月27日の年次総会において、ブラジルの6地域を口蹄疫ワクチン非接種清浄地域として認定することを決定した。今回認定されたのは、南部のパラナ州、リオグランデドスル州、北部のアクレ州、ロンドニア州の全域および北部アマゾナス州と中西部のマットグロッソ州の一部である。この結果、同国の口蹄疫ワクチン非接種清浄地域は、これまで唯一認定を受けている南部のサンタカタリーナ州と合わせて5州全域および2州の一部となった(図1)。ブラジル農牧食糧供給省(MAPA)によると、今回追加された地域には同国の牛総飼養頭数の約20%に相当する4000万頭強の牛が飼養されており、今回の決定で年間約6000万回分のワクチン接種が不要となり、生産者にとって約9000万レアル(18億9000万円、1レアル=21円)の経費節減につながるとしている。また、今回、新たにパラナ州が豚熱の清浄地域として認定された。
テレサ・クリスティナ農牧食糧供給省大臣は、今回のOTEの認定はブラジルの家畜の衛生基準の高さを示すものであり、同国牛肉・豚肉の新たな市場開拓に向けた取り組みや、すでに参入している市場への輸出拡大などいくつかの可能性を開くものである、と述べた。
2026年までに国内での完全なワクチン接種の停止を目指す
ブラジルでは2006年、マットグロッソドスル州で口蹄疫が確認されて以降、口蹄疫は発生していない。2007年には、サンタカタリーナ州が同国で初めてOTEから口蹄疫ワクチン非接種清浄地域として認定された。また、2018年には、サンタカタリーナ州を除く同国全体が口蹄疫のワクチン接種清浄国であると認定された。なお、同国では2017年、口蹄疫撲滅防止国家戦略計画(PNEFE)を策定し、2026年までに国内での完全なワクチン接種の停止を目指している。(表1)。
今回追加された地域では、牛総飼養頭数の約20%を占める
今回追加された地域では、前述のとおりブラジル全体の牛の約20%に相当する4000万頭強が飼養されている。この中には、最大の牛生産州である中西部のマットグロッソ州の一部が認定されたが、同州で対象となるのは5都市のみで限定的であるとみられる。一方、豚については、今回あらたにパラナ州およびリオグランデドスル州が口蹄疫ワクチン非接種清浄地域に認定されたことで最大の生産地である南部3州すべてが対象となっており、他の2州を加えた口蹄疫ワクチン非接種地域の豚飼養頭数は2039万頭と国内総飼養頭数の約50%を占めることとなる(図2)。
パラナ州やリオグランデドスル州では牛肉や豚肉の輸出拡大を見込む
ブラジルは、牛肉、豚肉いずれも世界有数の輸出国である。2020年の牛肉輸出量は、172万4404トンで100カ国以上の国に輸出されている。最大の輸出相手先は中国で、香港と合わせると全体の63%を占める。このほか、エジプト、チリ、ロシアなどが主要な輸出相手先である。
豚肉の輸出量は、90万1102トンで90カ国程度の国に輸出されている。最大の輸出先は牛肉と同様に中国で、香港と合わせると全体の67%を占める。このほか、シンガポール、チリ、ベトナムなどが主要な輸出相手先である(図2、3)。
ブラジル動物性タンパク質協会(ABPA)によると、今回対象となった地域のうちパラナ州とリオグランデドスル州では、牛肉だけでなく豚肉の輸出拡大の可能性があるとしている。リオグランデドスル州の豚肉輸出量は、2020年の26万1000トンから2021年には最大で29万3000トン、2022年には35万トンに増加すると見込まれている。また、パラナ州でも2021年が前年比5%増の14万5000トン、2022年には16万5000トンに増加すると見込まれている。また、これらの州においては、日本、米国、韓国、チリ、フィリピンなど世界で最も要件基準の厳しい市場にアクセスする可能性があるとしている。
【井田 俊二 令和3年6月7日発】
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