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NZ政府、温室効果ガス削減対策などの来年度農業関連予算案を公表(NZ)

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ニュージーランド(NZ)政府は2021年5月20日、来年度(2021/22年度<7月〜翌6月>)の予算案を公表した。
農業関係では、温室効果ガス削減対策やバイオセキュリティ対策が主となっており、ダミエン・オコナー農業相は同日、「気候変動と持続可能性の目標を達成するため、農家にとって使いやすい全国統一基準の農場計画の普及促進を支援するほか、昨年発表されたロードマップ『Fit for a Better World−Accelerating our Economic Potential』(注)の達成に向けた予算も措置する。また、第一次産業は今、量から質へ移行することにより、国内外の消費者の価値観に照準を合わせる」との声明を発表している。
主な農業関係の予算項目は以下の通り。予算額は、以下の5を除き2021/22年度から2024/25年度までの今後4年間で実行する総額。

1.温室効果ガス削減の加速化

(2400万NZドル:19億4400万円)
メタン・亜酸化窒素抑制剤、土壌炭素など、農業分野の温室効果ガス削減のための研究開発を加速化し、温室効果ガスの削減目標を達成するための手段を提供する。なおNZ政府は、2024年12月までに国内の全農場が温室効果ガス排出量の測定とその管理のための計画書を作成するという目標を掲げている。

2.全国統一農場計画システム提供の加速化

(3721万5000NZドル:30億1442万円)
農場アドバイザーによるキャリアパス構築や農場計画策定のためのデータ収集とツール開発の支援など、全国統一の農場計画(注)システムの提供を加速するための資金を提供する。これにより2025年までに最大4万人の農業従事者が、農場でのパフォーマンスを向上させ、温室効果ガスの規制要件を満たすための効果的な農場計画が利用可能となる。
(注)農場計画には、農業経営上の環境リスクを分析・評価し、それらのリスクをどのように管理していくかなどが記載される。

3.最新のバイオセキュリティスクリーニング技術の導入

(885万NZドル:7億1685万円)
オークランドの新郵便処理センターのバイオセキュリティ担当者の増員や新たな3Dスキャナー、高度なデータシステムの導入を支援する。これにより、増加する郵便経路のバイオセキュリティのリスク管理が強化され、当該センターでのスクリーニングが自動化される。

4.農業生産統計の作成

(90万NZドル:7290万円)
貿易交渉、政策開発、経済予測のほか、国内および国際的な報告要件を満たすために活用される農業生産統計の作成を支援する。この情報により、温室効果ガス削減目標への進捗状況や環境パフォーマンスなどの傾向の把握と対応が可能となり、農家の計画的な意思決定に貢献する。

5.マイコプラズマ・ボビス根絶プログラムの継続

(6608万NZドル:53億5248万円)
マイコプラズマ・ボビス(Mycoplasma Bovis)(注)に関する乳牛と肉牛の監視検査、感染が疑われる場合の家畜移動の制限、感染が確認された場合の牛群の淘汰、規制措置に起因する損失の補償および影響を受けた農家の支援を行う。また、この病気がNZ国内で根絶したことを証明するための長期的な監視プログラムの設計なども支援する。
(注)牛に乳房炎や肺炎、関節炎などを引き起こす。感染力が強く治療は難しいため、感染牛の早期発見と淘汰によるまん延防止が主な対策となる。NZでは2017年に初めて感染が確認されている。

6.全国家畜識別・追跡法施行の継続

(2251万6000NZドル:18億2380万円)
2012年の全国家畜識別・追跡法(National Animal Identification and Tracing:NAIT)の施行を継続するため、より高いレベルのコンプライアンスを徹底し、全国家畜追跡・追跡システムの信頼性確保の取り組みを支援する。
【参考】
表 NZ農業関連予算パッケージ
【調査情報部 令和3年6月7日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9530