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中国農業展望報告(2021−2030)を発表(牛肉編)(中国)

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 中国農業農村部は2021年4月20日および21日、中国農業展望大会を開催し、今後10年間の農業を展望する「中国農業展望報告(2021−2030)」を発表した。同大会は2014年から毎年開催されており、今回は2020年の総括と2030年までの農畜水産物の生産量や消費量の見通しが報告された。本稿ではこの中の牛肉について紹介する。

1.2020年の動向

 2020年の生産量は、新型コロナウイルス感染症(COVID−19)の影響(注1)により序盤は前年を下回って推移したが徐々に持ち直し、前年比0.8%増の672万トンとわずかに増加した(表)。
 消費量は、COVID−19の影響により外食需要が減少したものの、中国国内でのアフリカ豚熱による豚肉価格の上昇を背景とした代替需要などから同6.1%増の884万トンとかなり増加した。オンラインでの購入や調理済み牛肉製品需要の高まりなど、消費は多様化しているとされている。また、国産牛肉の価格は、需要の伸びに対して生産量が下回っていることや飼料価格高騰による生産コストの上昇などから年間を通して高値で推移した。
 輸入量は、昨年に比べて伸び率は鈍化したものの引き続き大幅に増加し、同27.7%増の211万8300トンとなった。輸入先については、輸入量の4割程度をブラジルが占めているが、ロシアなど新たな輸入先も加わっている。また、米中経済貿易協定第1段階合意(注2)により米国からの牛肉または牛肉輸入製品に課せられていた月齢制限(30カ月齢超のみ輸入可能)が撤廃されたことにより、米国からの輸入に関するハードルは低くなったことが報告されている。

(注1)「特集:海外の食肉需給の動向について〜新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえて〜中国牛肉産業の現状と課題」)を参照されたい。
(注2)海外情報「米中経済貿易協定第1段階合意の進捗に関する中間報告(米国)」を参照されたい。

2.2021年の動向予測

 2021年の生産量は、前年比1.8%増の684万トンと予測されている。繁殖雌牛の増頭や品種改良、防疫措置などを引き続き推進することから、1頭当たり重量および飼養頭数の増加が見込まれている。
 消費量は、COVID−19の収束に伴い外食需要が回復することなどから同1.7%増の899万トンと見込まれている。また価格は、豚肉の代替消費による影響は弱まるものの、需要に対して国内の供給が不足していることや飼料や子牛価格の上昇による生産コストの上昇などから、高止まりで推移すると予測されている。
 輸入量は、国内供給が引き続きひっ迫傾向にあることや国産に比べて輸入牛肉が安価であることから同1.5%増の215万トンと予測されている。また、一帯一路政策による牛肉や生体牛貿易の拡大が期待されている。

3.2030年までの動向予測

 生産量は、環境要因などを考慮すると伸び率は次第に鈍化するものの2030年には790万トンに達すると予測されている。また、家畜排せつ物の資源としての利用推進やスマート農業の推進などにより、環境に配慮した持続可能で近代化された畜産へと発展し、生産コストが削減されると予測されている。
 消費量は、人口増加や生活水準の向上などから増加を続け、2030年には1030万トンに達すると予測されている。しかしながら、展望期間中の後期には、高齢化により(2030年には人口に占める60歳以上の割合は25%前後と予測されている)消費量の増加率は鈍化すると予測されている。このような動きを受け、価格も、展望期間中の後期には高値ながら安定して推移すると予測されている。
 輸入量は、依然として内外価格差はあるものの、国内供給力の伸びを考慮すると輸入の伸びは緩やかになり、2030年は240万トンと見込まれている。2020年に署名した地域的な包括的経済連携(RCEP)協定などが、輸入先国の拡大と貿易の安定に寄与すると期待されている。
表 牛肉の需給動向および見通し
【阿南 小有里 令和3年6月18日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9530