英国政府は6月17日、豪州と合意した自由貿易協定(FTA)(注)の内容について概要を発表した。このうち、牛肉については協定発効から11年目に関税を撤廃(それまでの10年間は無税の関税割当枠を設定)し、関税撤廃後の5年間は特別セーフガード措置を導入することとされた。また、チーズやバターについても6年目に関税撤廃(それまでの5年間は無税の関税割当)、砂糖についても9年目に関税撤廃(それまでの8年間は無税の関税割当)が行われることとなった(表)。
英国の全国農業者組合(NFU)のバッターズ会長は18日、「英国は世界で最も価値の高い食品市場を持ちながら、なぜ英国がEUと他国とのFTAを下敷きとしない最初の貿易交渉でこれほどまでに譲歩してしまうのか全く理解できない」とのコメントをビデオメッセージで発表し、豪州とのFTA合意への不満を表した。また同氏は、政府に対し農業カウンセラーの配置や財政支援を求めるとともに、英国産農畜産物の販売のため、国外へ目を向ける重要性について言及した。
英国農業園芸開発公社(AHDB)主席分析担当のワイアット氏は17日、英国政府に先立ち15日に詳細を公表した豪州政府のプレスリリースを元に当FTAが英国の牛肉需給に与える影響を発表した。この中で、英国の牛肉自給率は約75%であることから、需要を満たすためには牛肉の輸入が必要となるが、その多くはEU、特にアイルランドが担っており、今後もその構造は変わらないとした。なお、GTAによると英国の牛肉輸入量のうち、豪州産牛肉が占める割合は1%未満と多くはない。しかし、ワイアット氏は、英国が輸入する豪州産牛肉は高価格帯であり、英国産牛肉の高価格部位への影響が及ぶ可能性を指摘している。一方で、豪州では牛群再構築が行われ供給減から価格が高騰していることに加え、豪州産牛肉の輸出先市場が増えていることもあり、すぐには大量の豪州産牛肉が英国に輸入される可能性は低いとしている。これらを踏まえ、今回のFTAによる輸入が英国の牛肉価格に与える影響については、(現時点での)予測は困難としている。
現地の専門誌によれば、両国議会による合意内容の承認を得て条約が発効するのは、早くても2022年半ばか、2023年になるのではないかとされている。
(注):
「英豪FTAが合意(その1:英国側の反応)」【海外情報 令和3年6月18日発】