豚肉価格下落を受けて国家備蓄のための豚肉の買入・保管を開始(中国)
中国国家発展改革委員会は6月28日、「政府の豚肉備蓄調整メカニズムを改善し、豚肉市場の供給と価格の安定を図る準備計画」(注)に基づき、中央政府と地方政府による国家備蓄のための豚肉の買入れおよび保管を開始すると発表した。
(注)「完善政府猪肉儲備調節机制 做好猪肉市場保供穏价工作預案」(2021年第770号公告)を指す。
同計画は、6月2日に中国国家発展改革委員会や財政部などが共同して発表したものである。今回の買入れおよび保管は、6月21日から25日の豚/穀物比(注)が4.90:1となり、同計画に定める生体豚価格が過度に下落した状況における警戒レベル(3段階)で最も深刻な「1級」(豚/穀物比が5:1を下回ったとき)となったことから行われるものとなる。今回の対応により、豚肉価格の下落に歯止めがかかることが期待されている。
中国政府は、現在の生体豚価格の下落について、通常に比べて重い生体豚の出荷が集中したことや、冷凍豚肉の輸入増加、季節的な需要の低迷などの要因が重なった結果としている。
(注)政府による養豚生産者の収益性の指標値。算出方法は、1キログラム当たり生体豚出荷価格/1キログラム当たりトウモロコシ卸売価格。損益分岐点は7:1(同計画において、従来の5.5〜5.8:1から7:1に変更された)。
中国の豚肉価格は、中国国内におけるアフリカ豚熱の発生による飼養頭数の減少などにより2019年半ばから上昇を続けていたところ、2020年2月には前年同月比161.1%高の1キログラム当たり58.9元(1025円:1元=17.4円)に達した(図)。このため政府は、最大の需要期となる春節を控えた2020年12月以降、12回にわたり計28万トンの備蓄豚肉を放出し、豚肉の価格安定に努めたとされている。
一方、国内各地では、豚肉価格の高騰を受け、新たな養豚場の建設や種豚の導入が続き、豚肉生産は急速な拡大基調に向かっている。このような中で、豚肉価格は生産の増加を受けて2021年2月を境に下落に転じており、直近6月には、同43.6%安の同27.0元(470円)となっている。
現地報道では、6月末からの卒業・入学シーズンのケータリング需要などから一部地域で豚肉価格にわずかな反発が見られるとされているが、これから豚肉需要が低下する夏季に入ることから、急激な価格回復は期待できないとの専門家のコメントもあり、今回の買入れによる豚肉価格の動向が注目されている。
【阿南 小有里 令和3年7月5日発】
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