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中国農業展望報告(2021−2030)を発表(豚肉編)(中国)

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 中国農業農村部は2021年4月20日および21日、中国農業展望大会を開催し、今後10年間の農業を展望する「中国農業展望報告(2021−2030)」を発表した。同大会は2014年から毎年開催されており、今回は2020年の総括と2030年までの農畜水産物の生産量や消費量の見通しが報告された。本稿では、この中の豚肉について紹介する。

1.2020年の動向

 2020年の生産量は、アフリカ豚熱の影響によりと畜頭数が減少し(前年比3.2%減:5億2700万頭)、豚飼養頭数の拡大などから第3四半期に入り前年同期比で増加に転じたものの、前年比3.3%減の4113万トンと減少した。
 消費量は、同2.0%増の4545万トンとわずかに増加した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により、上半期は前年同期比で約30%減少したが、下半期には供給量が増加したことに加え、学校や職場の再開などによる需要の回復などから通年では前年を上回った。また価格面では、生体豚が同60.2%高の1キログラム当たり33.9元(593円:1元=17.5円)とアフリカ豚熱の影響などから大幅に上昇したことを背景に、豚肉も同55.3%高の同52.4元(917円)と大幅に上昇した。また養豚業の収益指標の一つとなる豚肉価格に対する飼料費の比率は14.8:1となり、過去最高の収益性を示している。
 輸入量は、国内供給量の減少から大幅に増加し、同108%増の439万トンと過去最高を記録した。特に12月は44万100トンと単月の輸入量として最大となった。主な輸入先国はスペイン、米国、ブラジル、ドイツなどである。

2.2021年の動向予測

 2021年の生産量は、総飼養頭数がアフリカ豚熱の流行以前の水準にまで回復することで前年比19.8%増の4927万トンと予測されている。
 消費量は、生産の回復に伴い大幅な回復が見込まれ、同16.5%増の5297万トンと予測されている。なお、所得水準の向上や若者を中心とした低カロリー高タンパク質といった食への健康志向の高まりなど食肉消費構造の変化に伴い食肉消費量全体に占める鶏肉消費量の割合が増加する一方、豚肉消費量の割合は下落傾向と予測され、アフリカ豚熱の流行前には約63%であったが、生産回復後も約60%程度にとどまるとされている。
 また価格面では、高値で推移していた生体豚および豚肉の価格は、いずれも生産増に伴う下落が予測され、特に需要期である春節後の生体豚価格は1キログラム当たり20〜36元(350〜630円)で推移すると予測されている。
輸入量は、生産増に伴い2021年半ばから後半にかけて大幅に減少すると予測され、同13.4%減の380万トンと見込まれている。

3.2030年までの動向予測

 生産量は、前半を中心にアフリカ豚熱の感染拡大の影響から回復に向かい、後半は比較的安定して推移すると予測されている。2022年の生産量は、アフリカ豚熱の流行前の水準となる5402万トンとされ、その後、増加傾向で推移し、2030年には5998万トンまで成長すると見込まれている。
 消費量は、生産量の増加に合わせて前半を中心に大きく回復し、後半にかけて伸び率は鈍化すると予測され、2022年にはアフリカ豚熱の感染拡大前の水準となる5594万トンまで回復し、その後、増加傾向で推移し、2025年には5890万トン、2030年には6098万トンに達すると見込まれている。
 また、一般的に中国では、生体での輸送が主要な輸送形態とされていたが、アフリカ豚熱の感染防止対策により、生体から豚肉への変更やコールドチェーンの強化が図られている。そのため、今後は従来の市場からスーパーマーケット等で販売される冷蔵豚肉の消費割合が急速に増加していくと見込まれており、2025年には35%以上、2030年には50%以上を占めると予測されている。
 輸入量は、生産の回復に伴い、短期的には大幅に減少すると見込まれる。2025年には130万トンまで減少し、以降は比較的穏やかに減少して2030年には120万トン以下まで減少すると予測されている。
表 豚肉の需給動向と見通し
【海老沼 一出 令和3年7月6日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-4389