オランダ政府は6月30日、悪臭対策や窒素の排出削減等の環境問題への対応として行われる養豚生産者に対する廃業支援策に278戸が対象となったと発表した。オランダ政府は2019年10月、環境問題への対応として、養豚生産者に対する廃業支援のための補助金申請を受け付けると発表していた(注)。
当初は、本支援策への参加意向の申請期限を2020年1月15日として、その8週間後に対象農家を確定する予定であったが、申請者の審査や申請者が実際に廃業を決定するためには自治体との協議、さらには廃業後の生活設計に時間を要するため、ここまで決定が先延ばしとなった。
(注)
畜産の情報 2020年2月号「オランダ養豚における家畜排せつ物処理の取り組み〜持続可能な養豚のために〜 」を参照されたい。
今回の発表では、養豚生産者に対する廃業支援のための補助金を含むプログラム「Subsidieregeling sanering varkenshouderijen(Srv)」に参加意向を申請し、書類審査に合格した養豚生産者は430戸であるとし、このうち最終的に廃業を決意した生産者は278戸となった。278戸の内訳は、肥育経営が107戸、繁殖経営が97戸、一貫経営が61戸、その他経営が13戸である。本プログラムの対象となる養豚生産者は当初の見込みより減少したものの、本プログラムの対象地域である養豚経営が集中する南部地域の北ブラバント州で173戸、リンブルフ州で55戸、また東部地域のヘルダーラント州で27戸、オーファーアイセル州で20戸、ユトレヒト州で3戸の養豚生産者が廃業を決意した。このことから、南部および東部地域の環境が改善(養豚経営に伴う悪臭の軽減や窒素の排出削減)されるとしている。なお、同国では、作物に吸収されなかった排せつ物の土壌や水源への流入による環境汚染を防止するために飼養頭数を制御し、発生する排せつ物を管理することなどを目的とした豚生産権を導入しているが、今回の廃業支援策により、対象となった養豚生産者が保有していた豚生産権は、2019年時点の豚生産権の6.7%に相当するとしている。
また、オランダ政府は、廃業は養豚生産者にとって大きな決断であり、本プログラムをより良いものとするよう、可能な限り養豚生産者と一緒に考えてきたとしている。ただし、本プログラムの対象となった養豚生産者の中には、廃業支援のための補助金が不十分であったり、将来的に要件を満たさない計画を持っていたりするなどの理由で、最終的に廃業を見送った生産者もいることから、今後の支援策を策定する上での教訓にしたいとしている。
なお、本プログラムで措置されていた予算のうち、残余となった財源については国や州政府により他の窒素排出削減の対策のために充てられるとしている。