EU最大の農業生産者団体である欧州農業組織委員会・欧州農業協同組合委員会(Copa-Cogeca)は6月22日、EUモロッコ連合協定が、EU産トマト市場に大きな混乱をもたらしているとして、欧州委員会に対し同協定の再考を呼び掛けた。
同団体では、2014年に改定された同協定で定められたモロッコ産トマトのEUへの輸出規制に関する規定が適切に機能していないとした。具体例として、2020年にEU域内市場のトマト価格が暴落する中で、関税割当の2倍に相当する50万トンのモロッコ産トマトが輸入されたにもかかわらずセーフガードが発動されなかったことを挙げている。
また、モロッコ英国二国間協定によりモロッコ産トマトは英国に無関税で輸出できる中、同協定の関税割当量は、EU離脱(Brexit)後も再交渉が行われていない。さらに、EU産トマト輸出量の50%以上を占めていた英国向けが同国のBrexitに伴い減少していることで、さらなる混乱を招いている。2021年1〜4月の英国のEUからの生鮮トマトの輸入量は前年同期比32.5%減となっている。
同団体のベソネン事務局長は、「私たちは、同協定が最新の状況を反映しておらず、現在のEU産トマト市場の状況が急速に悪化する中で、欧州委員会は迅速に対応しなければならない。欧州委員会に対し、野菜の輸入量の増加がEUの農村地域の経済状況の悪化や生産者の収入に与える影響を包括的に評価することを要請する」と述べ、同協定の一刻も早い見直しを求めた。また併せて、「欧州委員会は、セーフガード発動基準の条項の修正と影響を受けた農村地域に対し補償を行うべきである」との提案を行った。同団体は、27カ国となったEUの現状を反映させるためにも、果物および野菜の関税割当量などの再考も提案している。
欧州の主要青果物生産国の生産者団体や企業等から構成されている欧州青果物生産貿易協会(EUCOFEL)も6月17日、同協定がEUのトマト市場を歪めているとして、同協定の趣旨が適切に実施されるよう欧州委員会に要請しており、Copa-Cogecaと同様にBrexitに伴いEUがモロッコに認めている関税割当量の再考を求めている。
(参考)EU産トマトの関連記事
野菜情報 2021年7月号「オランダのトマトの生産、消費および輸出動向」
【小林 智也 令和3年7月12日発】