中国農業展望報告(2021−2030)を発表(乳製品編)(中国)
中国農業農村部は2021年4月20日および21日、中国農業展望大会を開催し、今後10年間の農業を展望する「中国農業展望報告(2021−2030)」を発表した。同大会は2014年から毎年開催されており、今回は2020年の総括と2030年までの農畜水産物の生産量や消費量の見通しが報告された。本稿ではこの中の乳製品について紹介する。
1.2020年の動向
2020年の生乳生産量は、前年比7.5%増の3546万トンとかなりの程度増加し、2008年以降最多となった。これは、酪農業の活性化に伴う乳牛の飼養頭数および1頭当たり乳量の増加により、牛由来の生乳生産量が同7.5%増の3440万トンとかなりの程度増加したことが要因とされている(表)。
消費量は、乳製品の健康効果の浸透により消費習慣が醸成されていた中で新型コロナウイルス感染症(COVID−19)が刺激となり、1人当たり消費量は同7.9%増の38.11kg、全体では同8.4%増の5354万トン(いずれも生乳換算数量。以下同じ)とかなりの程度増加した。また、中国では一般的に牛乳は常温での流通が主流とされているが、コールドチェーンの整備などにより冷蔵牛乳の消費が継続して増加するなど消費構造の変化が報告された。
また価格面では、上半期はCOVID−19の影響などにより生乳の需給バランスが崩れ、乳業メーカーの在庫過多から生乳価格が下落したが、中国国内でのCOVID−19の鎮静化に伴い需要が拡大したことで、生乳価格および都市部での牛乳の小売価格はともに年平均では上昇した。
輸入量は、国産の育児用調製粉乳の需要増加や養豚業界のアフリカ豚熱からの急速な回復による飼料需要の増加などから、ホエイパウダーの輸入が同38.2%の62.64万トンと大幅に増加するなど引き続き増加し、同10.4%増の1823万トン(生乳換算数量。以下同じ)とかなりの程度増加した。
2.2021年の動向予測
2021年の生乳生産量は、酪農業の継続的な振興を背景に、各地で酪農場の建設が推進されることから前年比1.3%増の3591万トンと予測されている。また、中国政府は、酪農家の大規模化を酪農業発展の主要施策と位置付けているが、2021年の大規模農家飼養割合(全乳牛飼養頭数に占める、乳牛飼養頭数100頭以上の農家で飼養される乳牛の割合。以下同じ)は68.0%、乳牛の1頭当たり年間乳量は8.8トンと予測されている(注)。
消費量は、乳製品への理解が醸成されることにより、同2.0%増の5462万トンとわずかに増加することが予測されている。また、生乳価格は、消費量の増加と飼料価格の高騰等による生産コストの上昇などから、上昇傾向が継続すると予測されている。
輸入量は、生乳生産量の増加や消費者の国産志向の高まりはあるものの、生乳供給のひっ迫傾向が近々には解消されないとの見込みから同3.5%増の1886万トンとやや増加することが見込まれている。
(注)2020年10月に中国農業農村部と中国乳業協会が共同で発表した「中国乳業品質報告(2020)」によると、2019年の大規模農家飼養割合は64.0%、1頭あたり乳量は7.8トンである。
3.2030年までの動向予測
生乳生産量は、酪農業の振興の継続により展望期間中の後期には機械化や情報化、スマート農業化が進展し、過去10年間の年平均増加率0.9%増を大きく上回る年平均2.3%増で増加し続け、4389万トンに達すると予測されている。また、大規模農家飼養割合は80%に達し、乳牛の1頭当たり乳量は10トンを超えると予測されている。
消費量は、健康意識の高まりなどから消費人口は継続的に増加し、特に展望期間中の後期には冷蔵牛乳やチーズなどの消費量の大幅な増加が見込まれることから、2030年には6933万トンに達すると予測されている。また、生乳価格は、旺盛な消費や生産コストの増加、酪農業の振興による生乳生産量の増加などを加味すると、短期的には変動しつつも、高値ながら安定して推移すると予測されている。
輸入量は、引き続き増加するものの、国産乳製品の需要が高まることから、過去10年間の年平均増加率9.9%増を下回る年平均3.5%増で推移し、2030年には2563万トンに至ると予測されている。主な輸入先国は、引き続きニュージーランド、豪州、EUと予測されている。
【阿南 小有里 令和3年7月12日発】
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