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米国農務省、食肉および食鳥処理施設の能力向上に5520万米ドルを投入(米国)

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1.MPIRGプログラムに5520万米ドルの予算を投入

 米国農務省(USDA)は6月21日、新たに「食肉・食鳥検査準備助成(MPIRG:Meat and Poultry Inspection Readiness Grant)プログラム」に5520万米ドル(61億8240万円:1米ドル=112円)の予算を充てることを発表した。USDAは、同プログラムにより食肉・食鳥処理能力の向上と効率化を図るとともに、以下を進めるとしている。
 (1) 新規市場の開拓と既存市場の拡大
 (2) 生産者と消費者の需要への対応
 (3) 検査・食品安全基準の維持
 (4) 更なる商業プレゼンスの獲得
 (5) 小規模農家や新規就農者等の食肉・食鳥処理施設へのアクセス向上

 MPIRGプログラムのうち、「食肉・食鳥検査に係る連邦助成計画(PFGI:Planning for a Federal Grant of Inspection)プロジェクト」は、連邦検査を受けている施設を対象として、連邦検査許可証を取得するために必要な改修経費を補助するものである。一方、MPIRGプログラムのうち、「共同州間輸送(CIS:Cooperative Interstate Shipment)コンプライアンス・プロジェクト」は、後述するCISプログラムの適用可能な27州に所在する施設のみを対象として、同プログラムの遵守に要する運営経費を補助するものである。この補助金を申請するためには、州の検査対象施設の運営のためにCISプログラムの要件を既に遵守しているか、遵守に向けた対応を取っていることが必要となる。
 当該補助金についてヴィルサック農務長官は声明で、「我々は中小規模の食肉・食鳥加工業者や生産者の能力向上を図り、商取引の機会を増やしている。今回、食肉・食鳥処理施設はMPIRGプログラムを通じて、連邦食肉検査法や食鳥製品検査法に基づく連邦検査許可証を取得するために必要な改善経費、あるいは州のCISプログラムに基づく運営に必要な改善経費の補助を受けることができるようになった」とメリットを強調した。

2.CISプログラムとは

 CIS(共同州間輸送)プログラムは、2008年農業法で承認後、2012年に開始された。CISプログラムの下では、州による検査を受けた施設は、特定の条件の下で連邦政府による検査を受けた施設と同様に稼働することができ、肉および肉製品の州外への流通、国外への輸出が可能となるため、州による検査を受けた食肉・食鳥処理施設のビジネスチャンスの拡大を推進するものである。
 本プログラムの適用が可能な施設は、食肉・食鳥検査プログラム(MPI)を確立し、食品安全検査局(FSIS)の規制基準と同等以上の基準を有するとされた27州に所在する施設事業所に限定される。FSISの規制基準と同等以上の基準とは、例えば、連邦食肉検査法(FMIA)、食鳥製品検査法(PPIA)および関連規制に規定される要件を管理するための法的権限を州が有すること、州による検査をFSISによる検査と同一の方法(同水準の検査室、同頻度のサンプル採取、同一の検査手法、同一の訓練を受けた検査官など)で実施することなどが挙げられる。
 食肉処理施設がCIS プログラムの適用を受けるためには、施設から州への申請、州からFSISへの推薦、FSISによる検証を経て、CISプログラム適用施設として最終決定される必要がある。州からの推薦を受けたFSISは、州による検査を受けた施設が、衛生基準に関する連邦規制要件を満たすこと、HACCP計画を有する、あるいは策定することなどを含む、法律に基づくすべての要件を満たしているか検証を行う。
 このような堅固な手続きを経て、現在、オハイオ州、ミズーリ州、アイオワ州、ウィスコンシン州、インディアナ州、サウスダコタ州、ノースダコタ州、メイン州、バーモント州、の9つの州がFSISと協定を締結、93施設がCISプログラムに参加し、ビジネスチャンスの拡大に取り組んでいる。
表
【調査情報部 令和3年7月14日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9805