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2021年下半期の野菜需給の見通しを公表(豪州)

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最終更新日:2021年8月17日

  豪州のRURAL BANK(注1)は2021年8月、豪州の野菜をはじめとした農畜産物の2021年下半期の生産状況や予測について公表した。野菜に関しては、昨夏の穏やかな気候と昨秋の降雨量が多かったことにより、豪州のほとんどの地域で堅調な生産が見られているとしている。一方で、同国では新型コロナウイルス感染症(COVID−19)の影響を受け、労働力の確保が課題となっているが、報告書によると、今後2022年初頭にかけての海外からの人材労働力は、COVID−19拡大以前の水準である約70%に達すると予測されており、現在の約30%から大幅な改善が見込まれている。これは、最近豪州政府から発表された農業ビザ(注2)によるもので、長期的にも労働力の問題をさらに軽減するとされている。
(注1)2000年に設立され、豪州の農村部に400以上の拠点を持つ銀行。
(注2)英豪FTA合意により、英国民が豪州での農業従事義務を免除されたことを背景に、新たにASEAN地域の国々の労働者が、豪州で3年間農業に従事することを認めるビザで、2021年9月までの導入が予定されている。
 
【供給】
 特に西オーストラリア州、ニューサウスウェールズ州、クイーンズランド州では、野菜の生産に適した気候条件などが整っている。一方で、依然として全国的な季節労働者の不足が続いているため、一部の生産者は作付量を減らしており、労働集約型野菜の供給に悪影響を及ぼす可能性があるとされている。
 たまねぎの輸出は過去1年間で大幅に減少したが、2020年初頭と比較して、輸送コストが大幅に上昇したことが主な原因とされている。この輸出の減少により、輸出用たまねぎが国内市場に流入したことで、豪州国内では供給過剰となっている。
 ブロッコリーの生産量は2021年第1四半期に比べて減少したが、南部の州が7月から9月にかけて収穫のピークを迎えると、供給は回復すると見込まれている。
 にんじんの生産量は、西オーストラリア州、ビクトリア州、タスマニア州で堅調な生産が続いており、今後数カ月間は高水準を維持するが、年末頃には落ち着くものと見られている。
 なお、豪州農業資源経済科学局(ABARES)が2021年6月に公表した需給見通しによると、2021/22年度の主要野菜の生産量は増加傾向にあると見込まれている(図1)。
図1 主要野菜の生産量の推移
【需要】
 豪州国内の野菜の需要は、2021年上半期を通じて増加している。特にたまねぎ、ブロッコリー、にんじんは、家庭料理や外食産業での需要を中心に堅調に推移している。外食産業ではCOVID−19からの回復が進んでおり、豪州統計局(ABS)によると、2021年3月の外食産業の売上高は40億豪ドル(3320億円)と推定され、COVID−19拡大前の2020年2月の39億ドル(3237億円)を回復した。また、需要復調の動きとしては、西オーストラリア州の小売業者では 有機野菜の棚の増設を進める動きもあり、有機野菜生産者にとってビジネスチャンスとなっている。
 にんじんの輸出需要は、2020年に前年比7%以上増加した後も堅調に推移しており、アラブ首長国連邦、サウジアラビア、マレーシアが主な輸出相手国となっている。
 
【価格】
 かぼちゃ、トマト、葉物野菜など、季節労働者に依存する作物の作付けが減少することで、夏に向けて野菜価格の上昇が予想されている。たまねぎの国内価格は2021年8月現在では、COVID−19拡大前の水準よりも50%以上低いが、2021年下半期は15〜20%程度と徐々に上昇すると予想されている。
一方でブロッコリーの国内価格は、労働力不足と季節的な理由により、例年よりも高くなっている。今後は、生育環境が良好であることや、外国人労働者の流動性の改善などによる円滑な収穫作業が見込まれることなどから、今後3カ月間で価格は最大25%下落すると予想されている。
 なお、ABSが2021年7月に公表した、2021年第2四半期の消費者物価指数では、野菜は前期に比べて5.5%上昇している(図2)。
図2 野菜の消費者物価指数の変化率
【調査情報部 令和3年8月17日発】
 
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-4394