欧州委員会、バイオ燃料の短期的需給見通しを公表(EU)
最終更新日:2021年8月20日
欧州委員会は2021年7月5日、農畜産物の短期的需給見通し(注)を公表した。今回、このうちのバイオ燃料(バイオディーゼルおよびバイオエタノール)の需給見通しの概要について紹介する。
(注)欧州委員会は、農畜産物の短期的需給見通しを年3回(晩冬、初夏、初秋)、中期的需給見通しを年1回(12月)公表している。
バイオ燃料の需要は2021年に回復を見込む
2020年のバイオ燃料の消費量は、前年比3.4%減の2357万キロリットルと、新型コロナウイルス感染症(COVID−19)の感染拡大に伴う都市封鎖による影響から減少するも、輸送用燃料全体の減少幅よりは軽微となった。これは、欧州議会による輸送用燃料へのバイオ燃料や再生可能エネルギーの10%以上の混合義務(注1)が奏功したことが一因であると考えられている。バイオディーゼル(ディーゼルエンジン用のバイオ燃料)の消費量は、輸送用燃料への混合率の上昇が進んだが、同4.1%減の1890万キロリットルとなった。また、バイオエタノールの消費量も、工業用需要が増加したものの、同6.6%減の710万キロリットルとなった(図1)。
2021年には、COVID−19の影響の低減が見込まれ、バイオ燃料の混合率の目標水準(注2)が年ごとに引き上がることを背景に混合率の更なる上昇が見込まれることから、バイオ燃料の需要は回復し、COVID−19以前の水準を超えると予測されている。
注1: 2008年12月に欧州議会が採択した「再生可能資源のエネルギー利用促進に関する欧州議会および欧州理事会指令」において、EU加盟国へ輸送用燃料へのバイオ燃料や再生可能エネルギーの最低10%混合を義務づけるとともに、バイオ燃料導入に係る持続可能性基準が示された。
注2:上記基準において、目標水準の達成度合いを算定する際に、各種の廃棄物や残さ等を原料とするものについては先進型バイオ燃料とされ、他のバイオ燃料等の 2 倍分とみなして計上される扱いとなっている。
バイオ燃料の生産量は増加、輸入量は減少の見通し
今後、バイオ燃料は、COVID−19の影響の低減による需要の回復見込みを背景に増産が予想されている。特にバイオディーゼルにおいては、EU加盟国における再生可能資源のエネルギー利用促進政策による動きもあって、中国をはじめとするアジア諸国からの廃食用油の輸入が増加している。このため、21年のバイオ燃料の生産量は、前年度より12%増加して650万キロリットルと増産が見込まれている。
一方、20年のバイオディーゼル輸入はCOVID−19の影響を受け減少するも、バイオエタノール輸入は、20年後半に安価なブラジル産の流入により輸入量は130万キロリットル(前年比37%増)と大幅に増加した(図2)。
21年について、バイオ燃料輸入は、全体で25%減少し、バイオディーゼルで300万、バイオエタノールで100万キロリットルと予測された。
また、今後のバイオ燃料の需要について、欧州委員会では、COVID−19ワクチン接種の進展により、EUでは飲食店の再開をはじめとする諸規制が緩和されることで、夏の観光シーズンを中心に消費の好転が見込まれるとしつつ、一方でCOVID−19ウイルスの変異株に対するワクチン接種者への影響が不透明であるとし、引き続き注視する姿勢を見せている。
【水野 崇 令和3年8月20日発】
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