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欧州委員会、砂糖の短期的需給見通しを公表(EU)

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最終更新日:2021年8月20日

 欧州委員会は2021年7月5日、農畜産物の短期的需給見通し(注)を公表した。今回、このうちの砂糖(てん菜)の需給見通しの概要について紹介する。
 
(注)欧州委員会は、農畜産物の短期的需給見通しを年3回(晩冬、初夏、初秋)、中期的需給見通しを年1回(12月)公表している。

EUの期末在庫量は、前年度比で半減

 2020/21年度(10月〜翌9月)のEUの砂糖生産量は1440万トンと低迷し、輸出量も生産余剰の減少から、過去最低の80万トン(前年度比30%減)になると見込まれる(図1)。また、輸入量も域内消費が比較的安定する中、輸出量が減少することから、輸入量は150万トン(同16%減)にとどまると予測されている。消費量は、一人当たりの砂糖消費量が長期的な減少傾向にある中、新型コロナウイルス感染症(COVID−19)の収束後、外食需要の回復による減少幅の緩和が見込まれることで、食用に1480万トン(精製糖換算、以下同じ)、バイオエタノール(60万トン)を含めた工業用に140万トンと予測されている。結果として、同年度の期末在庫量は110万トン(同48%減)と大幅に減少すると予測されている。
 2020年の世界の砂糖価格は、COVID−19のパンデミック初期に一時的に急落したが、2021年春には完全に回復した。EUでは1トン当たり370〜380ユーロ(4万8840〜5万160円)で安定して推移し、2021年には同400ユーロ(5万2800円)を目指す展開となっている。
EUの砂糖輸入量

2021/22年度の砂糖生産量は、1550万トンに増加の見込み

 2021/22年度のてん菜の作付面積は149万ヘクタール(前年度比1.3%増)とわずかに増加すると予測された(図2)。また、播種期の寒波と降霜により作付けの一部に影響があったものの、そのほとんどで再播種が行われるとともに、春先の寒さにより病害虫の発生が抑えられたことで、同年度のてん菜の収量は前年度比9.4%増の1ヘクタール当たり73.8トンと、過去5年平均収量並みの回復が予測されている。このため、てん菜生産量は1億1004万トン(同11%増)とかなり大きく、砂糖生産量は1550万トン(同6.9%増)とかなりの程度増加すると見込まれている。一方、砂糖消費量は前年度と同程度の1480万トンと見込まれることから、在庫量の回復が見込まれている。また、世界の砂糖生産量は、非常に深刻な干ばつによるブラジルの生産量減少を、他の主要砂糖生産国であるEU、ロシア、タイ、インドの生産量増加が補うため、全体では緩やかに増加すると予想されている。
EUのてん菜作付面積と生産量
 また、今後の砂糖の需要について、欧州委員会では、COVID−19ワクチン接種の進展により、EUでは飲食店の再開をはじめとする諸規制が緩和されることで、夏の観光シーズンを中心に消費の好転が見込まれるとしつつ、一方で、COVID−19ウイルスの変異株に対するワクチン接種者への影響が不透明であるとし、引き続き注視する姿勢を見せている。
 
(注)為替レートは1ユーロ=132円(131.61円)(2021年7月末日TTS相場)を使用した。
 
 【調査情報部 水野 崇 令和3年8月20日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際情報グループ)
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