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ドミニカ共和国のアフリカ豚熱発生状況と米国農務省の対応について(米国)

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1.ドミニカ共和国でのアフリカ豚熱発生

(1)アフリカ豚熱の発生状況

 ドミニカ共和国で発生が確認されたアフリカ豚熱について、同国農務省(SEA)は7月29日、サンチェス・ラミレス州およびモンテクリスティ州の2つの州で発生したことを発表するとともに、SEAによる防疫措置が開始されたことを明らかにした。さらに、8月2日には両州を含む11の州で、10日には別の3つの州でも新たな発生が確認され、全31州のうち合計14の州での発生が明らかとなった(図)。

(2)ドミニカ共和国の防疫対応

 SEAは7月29日、大統領の指示を受け、クルス農務大臣を委員長としたアフリカ豚熱対策委員会(以下「ASF対策委員会」という)を設置し、両州での飼養豚および死亡豚の移動禁止や発生確認地域の消毒などの防疫措置を実施することを発表した。そして、7月31日にはASF対策委員会が専門家との会合を経て、以下の対策を決定した。
(1)両州内外への飼養豚および死亡豚の移動禁止
(2)農務省の動物衛生部局および畜産部局の技術者、軍、農業銀行で構成されるアフリカ豚熱撲滅チームの設置
(3)感染が確認された裏庭養豚の全ての豚1万7000頭(7月31日現在)の殺処分(報道によると、同国内での豚総飼養頭数は135万頭)
(4)殺処分対象となる豚の重量単価の算出と農業銀行を通じた生産者への補償金支払い
(5)感染地域に出入りする全ての車両の消毒
(6)感染地域の要路の管理への軍の動員
 これらの対策は、8月2日に新たな感染が確認された9つの州、10日に新たな感染が確認された3つの州を加えた合計14の州にも適用されている。なお、車両消毒は感染が確認された州のみならず、その周辺地域でも予防的に実施されている。
 また、SEAは8月2日、生産者への補償金支払いについて、市場価格に応じた額を支払うとして具体的な補償金額を示した。SEAによると、最初に豚の殺処分が実施されたサンチェス・ラミレス州の生産者に対し、3783頭(34万9945キログラム)分の補償として3970万ドミニカ・ペソ(7662万円:1ドミニカ・ペソ=1.93円)が支払われた。今後も同州を含む14の州で飼養豚が殺処分対象となった生産者に対し、毎週支払いを続けるとしている。
 このほか、SEAによると、ドミニカ共和国でのアフリカ豚熱の根絶のために、国連食糧農業機関(FAO)、米州農業協力機関(IICA)、動植物衛生地域国際機関(OIRSA)、国際獣疫事務局(OIE)から経済的・技術支援を受けており、それら国際機関の専門家が同国を訪れ、防疫対応の支援を行っている。
図

2.米国の対応

(1)水際対策

 米国は、ドミニカ共和国では豚熱が発生していたことから、以前より同国からの豚肉および豚肉製品の輸入を禁止している。今般のドミニカ共和国でのアフリカ豚熱の発生を受け、米国税関・国境警備局(CBP)は、同国からの入国者による豚肉および豚肉製品の持込みがないよう検査を強化するとともに、同国発の航空機由来の食品残さが適切に処理されているか確認を行っている。CBPのサグル副局長は取材に対し、「アフリカ豚熱がどのようにドミニカ共和国に侵入したかは不明だが、航空機や船舶を通じて米国に持ち込まれないよう尽力していく」と答えた。在ドミニカ共和国米国大使館も、米国への旅行者や帰国者に対し、豚肉および豚肉製品の持込み禁止、帰国後少なくとも5日間の農場など動物飼養施設への訪問を自粛するよう呼びかけている。

(2)周辺国での監視体制の強化支援

 米国農務省/動植物衛生検査局(USDA/APHIS)によると、野生イノシシの駆除計画が進んでいるプエルトリコでは、駆除頭数を増加させるべくUSDAが人員と資材を動員しているとのことである。また、ハイチに対しても、豚の検査を支援する準備があるとしている。

(3)米国内の対策

 USDA/APHISは、米国の養豚業界と協力し、国内の養豚場でのバイオセキュリティ対策の強化に取り組むことを発表した。また、全米豚肉生産者協議会(NPPC)も養豚農家に向けて、農場バイオセキュリティガイドラインの再確認と適切な措置の実施を強く呼びかけている。米国内の報道によると、カンザス州立大学のゲバート獣医師は、「水際対策のほか、最も重要な予防策は養豚農場のバイオセキュリティの向上である。アフリカ豚熱が国境を越えた場合に、農場への病原体侵入を防ぐことが最重要で、万が一、侵入してしまった場合には可能な限り迅速に発見する必要がある」と述べている。
 このほか、USDA/APHISは、食品残さを給餌している農場を調査し、加熱基準を満たしているかどうかの確認を行っている。
【調査情報部 令和3年8月24日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9805