食肉の原産国表示ルールの調査結果を発表(EU)
欧州委員会は8月10日、現在実施されている食肉に対する原産国表示規則に関する調査結果を発表した。この調査は、規則の施行後5年以内に実施し、その結果を欧州議会や欧州理事会に提出することが義務づけられている。
EUの食肉に対する原産国表示は、規則1337/2013および実施規則1337/2013により2015年4月1日から施行され、豚肉、羊肉、山羊肉、家きん肉(カットの形態を問わず、ひき肉を含む生鮮、冷蔵、冷凍の包装された小売用食肉)を対象に義務化されており、飼養国、と畜国の表示も求められる(表)。
なお、牛肉についてはBSE発生の経験を踏まえ、規則1760/2000および委員会規則1825/2000により2000年9月1日以降にと畜・処理された牛肉を対象に、豚肉などに比べて厳しい内容の原産国表示が義務付けられている。
写真 鶏肉の表示例(ベルギーの小売店で販売されている鶏肉の包装パッケージラベル)
ベルギーの公用語であるオランダ語とフランス語の両方で、上段は出生国と飼養国(ベルギー)、下段はと畜国(オランダ)が表示されている(出生国は自主的表示)
本調査の調査結果と考察は以下のとおり。
1) 事業者への影響については、事業者がすでに導入していたトレーサビリティーシステムの最小限の改修により対応が可能であったため、追加的なコストはほとんどかからず、消費者価格に転嫁されることはなかった。
2) 消費者は、自国が原産国である食肉を好むこともあり、ラベルに記載されている情報に対する満足度は高かったものの、飼養国(reared in)や原産国(origin)との表記については、理解されていない傾向があった。
3) EU域内貿易への大きな影響は認められなかった。これは、(繁殖農家から肥育農家への)生体家畜の移動が飼養国に影響を与えない月齢で行われていること、また、規則発効前から域内産食肉の市場割合が高かったためと考えられている。
4) この表示義務付けによる事業者の具体的なメリット(売上高の増加など)は認められなかった。ただし、透明性が高まり、消費者の信頼と信用が向上したとの意見が寄せられた。
5) 表示対象の拡大について、多くの関係者(全体の4分の3)は必要がないと回答したものの、一部の意見としては、(1)原産国表示の義務化をフードサービス部門や加工食品の原材料に広めるべき(2)食肉小売店の店先で切り分けて販売されている食肉に広げるべき(3)うさぎ肉を追加すべき、といった意見があった。
【調査情報部 令和3年8月30日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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