なお、FAWの防除について同国では、蛾の一種であるアメリカタバコガ(American cotton bollworm(学名:Helicoverpa zea))向けの殺虫剤の散布が一般的に行われている。
殺虫剤による防除は、同国で広く採用されている方法であるが、FAWの個体群によっては感受性の違いがあることが、豪州連邦科学産業研究機構(CSIRO)などの研究機関で報告されている。また、殺虫剤の散布においては、葉の隙間などに薬剤を行きわたらせることが難しく、個体数が少ない場合での散布は不経済であることなどから、最近ではFAWの天敵となる昆虫を用いた生物的防除が試みられている。
例えば小さな蜂の仲間であるTrichogramma pretiosumやTelenomus remusは卵からの孵化を阻害し、また、Cotesia marginiventrisという蜂は、FAWの幼虫に寄生して成長を阻害することで知られ、これらを卵の状態で手作業や近時ではドローンなどを用いて圃場に散布する手法が採られている。
また、昨年には、FAWだけを攻撃するウイルスを含む有機認証の生物農薬「Fawligen」の使用が許可された。本薬剤によると、FAWがFawligenに含まれるウイルスに感染してから4〜8日で幼虫が発症し、最終的には死亡するとされている。
なお、天敵昆虫などの生産には多くの労働力が必要であり、高価な化学薬品と同等のコストが掛かるとされているが、生産者が殺虫剤を浴びながら散布するよりも、はるかに安全で効果的な対応策であると評価されている。
これらの防除策の実証などについては、クイーンズランド州農業水産省、ビクトリア州農業省、綿花研究開発公社(Cotton Research and Development Corporation)が主導し、豪州の園芸研究開発機関である「ホートイノベーション」が生産者に提供し、助言などを行っているが、持続可能な農業生産の観点からも、天敵昆虫や生物農薬による防除のさらなる研究や普及が望まれている。
【調査情報部 令和3年8月31日発】