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オランダの全ての小売チェーンで動物福祉に配慮した鶏肉の販売に移行するも温暖化対策は後退(EU)

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 オランダの動物福祉団体ワッカーディア(Wakker Dier)は8月11日、オランダの小売チェーンのボニ社が2023年末までに販売している鶏肉をオランダの民間認証制度であるベターレーベンの一つ星の鶏肉に切り替えるとの発表を歓迎する声明を公表した。

 ベターレーベンとは、2007年にオランダ動物保護協会が制度化した民間の認証制度で、消費者がどのような基準で動物が飼育されたのかを一目でわかるように食品ラベルに表示されている。ベターレーベンのマークには、三段階の認証があり、星の数が増えるにつれ動物福祉度が上がる。なお、ベターレーベンは、英訳するとベターライフ(より良い人生)となる。

 ワッカーディアは2012年以来、動物福祉に配慮していない鶏肉の販売中止を求めるキャンペーンを行っていた。その後、2015年1月には、オランダの小売チェーン、生産農家、取引業者などが「明日の鶏」と名付けられた鶏の飼養に関して最低限の動物福祉を満たす要求事項について合意していた。現在、オランダではボニ社以外の全ての小売チェーンが、ベターレーベン一つ星の鶏肉への切り替えにすでに取り組んでいる。
 なお、鶏肉においてベターレーベンの一つ星認証を取得するには生育速度が緩やかな品種(1羽の1日当たり平均増重量が最大で45グラム以内など)を広いスペース(最大飼養密度は1平方メートル当たり12羽または25キログラム以内)で飼育する必要がある。また、飼養環境として、鶏舎内に日光が入り、屋根付きの外部運動場への自由な出入りが可能であることも求められている。

 一方で、現地報道によるとボニ社は、「今回の決定は難しいものであり、鶏自体は恩恵を受けるかもしれないが、気候にとってはそうではない。ベターレーベン一つ星認証の鶏肉は生育期間が従来の鶏と比較して2週間長くなるため、より多くの飼料が消費されることとなり、環境への負担が大きくなる」とコメントしている。
 また、オランダ養鶏協会(NVP)は、「気候のためには従来の成長速度が速い品種の方が良く、環境保護の観点からすると、二酸化炭素の排出量が増えるなどの欠点もある。また、農家が農場の規模を拡大する許可を得られるかどうかも疑問であり、2年後までに今回の決定を実現するのは大変なことだ」としている。さらに、「小売チェーンが一つ星認証の鶏肉を販売するという今回の約束を守らない可能性もあるため、必要な投資を行う農家にとってのリスクとなる。また、小売チェーンは鶏肉価格が高すぎると判断して、ポーランドから鶏肉を調達するかもしれない」との懸念を表明している。
 今回の動きを受けて、オランダのワーヘニンゲン大学は、動物福祉の第一歩であるとする一方で、生育期間が延びることから、より多くの飼料が必要であること、二酸化炭素の排出量が増加するなど温暖化対策にとっては必ずしも良くないだろうとしている。
【小林 智也 令和3年9月2日発】
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