ラボバンク、世界の乳業メーカーランキングトップ20(2020年)を公表
オランダの農協系金融機関ラボバンクは8月25日、世界の乳業メーカーの2020年売上高(注)ランキング上位20社を発表した。
(注)売上高は、牛乳・乳製品の販売に係るもののみを対象とし、2020年の財務状況および2021年1月1日〜6月30日までに完了した企業合併・買収(M&A)をベースにしたものである。
2020年の概況
ラボバンクによると、2020年はフードサービス業界の混乱、生乳価格の乱高下、消費傾向の変化、輸送の混乱など乳業メーカーはかつてない困難な状況下での対応を強いられた一方、上位20社の総売上高(米ドル換算)は、前年比1.6%減とわずかな減少にとどまった。また、企業合併・買収数(M&A)は、前年の105件を下回る80件であった。
新型コロナウイルス感染症(COVID−19)流行下において、消費者の環境に対する関心が高まっている。2020年にコンサルティング会社が8カ国3000人を対象に行った調査によれば、回答者の7割がCOVID−19流行前と比較して環境に対しての意識が高まったとされている。
今回公表の上位20社を含む多くの乳業メーカーは、持続可能性への配慮および2050年カーボンニュートラル(温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする)に向けた方針を打ち出している。米国のニューヨーク大学によると、2015年から2019年の間に米国で流通した商品のうち16%が持続可能性に配慮した製品であり、販売増加額の5割以上を占めた。
各社の動向
ランキング首位となったラクタリスは、売上高を前年より20億ドル(2220億円:1ドル=111円)伸ばした。オーガニックへの注力や中東、アフリカ、南北アメリカにおけるM&Aにより、同社の売上高は2000年の48億ドル(5328億円)から20年で約5倍となる230億ドル(2兆5530億円)まで拡大した。今回の集計に含まれていない米国のクラフト・ハインツのナチュラルチーズ部門を含め、総額25億ドル(2775億円)規模のM&Aも予定されており、来年も売上高が増加する見込みである。
第2位となったネスレは、2019年に米国のアイスクリーム事業を売却した時点で、2020年は2位になることが予想されていた。しかし、同社の乳業関係の売上げは依然として大きなものである。
前年に続き第3位となった米国最大の酪農業協同組合であるデイリーファーマーズアメリカは、2019年に同業のディーンフーズを買収したことによりその順位を維持した。
第4位のダノンは、育児用粉乳の分野は伸び悩んだものの、乳製品代替品分野に注力し、前年に引き続き順位を維持した。
第5位のアジア地域の大手乳業である伊利集団は、ニュージーランドのウェストランド社を買収したことで売上高を拡大させ、上位グループとの差を詰めている。伊利集団は8月30日に上半期の売上高に関するプレスリリースを発表し、同ランキングに同社が掲載されたことを歓迎した。また、世界経済が減速する中で高い成長率を維持できた要因として、市場環境の変化に迅速に対応し、サプライチェーンに注意を払うとともに、新製品を投入し、Eコマースに注力したためと述べている。
なお、20位以内で前年から新たにランクインしたメーカーはなく、日本のメーカーとしては明治が前年と同じ13位となった。
乳製品代替品市場の成長について
ラボバンクは、飲用乳やヨーグルトの代替品市場の成長、特に大麦やアーモンド由来の製品の販売増加については無視することはできない存在としている。顕著な例としてダノンを挙げ、同社の代替品による売上げは、2017年の米国のオーガニック食品企業のホワイトウェーブの買収によって2020年に25億ドル(2775億円)に達し、前年比15%増であったとしている。
一方で、乳製品代替品の市場規模は全体としてはまだ小さく、乳製品代替製品の大手企業であっても、同ランキングのトップ20に含まれるほどの売り上げを実現することは、当分はないとみている。
【調査情報部 令和3年9月7日発】
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