大型ハリケーン「アイダ」により穀物輸出ターミナル損傷、輸出再開の目途立たず(米国)
大型ハリケーン「アイダ」が8月29日、米国南部ルイジアナ州に上陸し、穀物輸出ターミナルを直撃した。世界五大穀物メジャーのひとつであるカーギル社が所有するルイジアナ州の輸出エレベーターが損傷を受け、穀物輸出に支障を来しているほか、送電線の損壊による大規模停電により、ブンゲ社、CHS社なども輸出再開の目途が立たない状況が続く。主な穀物商社の被害状況と対応状況は以下のとおりである。
(1)カーギル社
カーギル社は8月30日、メキシコ湾付近のミシシッピ川沿いにある2つの穀物ターミナルのうち、ルイジアナ州リザーブに位置する輸出エレベーターが倒壊するなど大きな被害を受けたと発表したが、9月1日には、同州ウェストウィーゴに位置する残る1つの穀物ターミナルにも被害が生じていたことを発表した。同社の広報担当者によると、現在も被害状況を調査中であり、当該ターミナルからの輸出業務の再開時期については見通しが立っていない。
(2)アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)社
ADM社は、ハリケーンの上陸に備えて閉鎖していたニューオーリンズの輸出エレベーター4基と港湾業務の被害状況を調査するとしている。同社によると、顧客のニーズに応えるべく、必要に応じて代替輸送の手配を行っている。
(3)ブンゲ社
ブンゲ社は、ルイジアナ州デストレハンにある輸出ターミナルなどの設備に大きな損傷は見られなかったとしている。8月31日には稼働を再開する予定であったが、電力供給が停止しているため、稼働再開の見通しは立っていない。
(4)シーエイチエス(CHS)社
米国最大の農業協同組合であるCHS社は、ニューオーリンズ南部に位置するマートルグローブの施設に電力を供給する送電線が破壊されたことを受け、9月までに予定していた輸出貨物をワシントン州カラマのターミナルに振り向けることを発表した。
ミシシッピ川における船舶の通行再開状況
米国沿岸警備隊(USCG)によると、8月29日にルイジアナ州に上陸したハリケーン「アイダ」の影響により、ミシシッピ川での船舶の通行を同日から9月2日までの5日に渡って禁止していたが、2日現在、マイルマーカー167.5(ルイジアナ州セントジェームズ付近)以北においては通行を再開し、マイルマーカー105(ルイジアナ州ブリッジシティ付近)以南においては、昼の時間帯のみ通行を再開したとのことである。これらの水路においてはまだ瓦礫などが残っており、USCGは注意を促している。一方で、マイルマーカー105と167.5の間の区間は、倒壊した電線や沈没した船舶があるため、すべての船舶の通行が禁止されている。ルイジアナ州によると、川の中には座礁した船や送電線が残っており、航行の安全確保のためにはそれらを撤去する必要があるが、水位が低いこともあり、撤去は容易ではないとのことである。
米国からの穀物輸出の経路
米国の穀物は、主にミシシッピ・ガルフ、太平洋北西部、テキサスガルフ、大西洋岸及び五大湖からアジアやヨーロッパ向けに輸出されているほか、内陸輸送によりメキシコ向けに輸出されている(図)。9月2日に公表されたUSDA「Grain Transportation Report」によると、2021年1月から8月26日までに輸出された小麦、トウモロコシおよび大豆は、ミシシッピ・ガルフからの輸出が4442万4000トンと主要積出先の合計量の50%以上を占めている(表)。今回のハリケーン「アイダ」による被害を受け、ミシシッピ・ガルフからの輸出が困難となっており、米国穀物商社は、船舶の通行再開を待つか、太平洋北西部に一部の穀物を振り分けるか判断に迫られている。米国メディアの報道によると、8月30日以降、ミシシッピ州南部にある米国農務省(USDA)の輸出検査用エレベーターに到着した船舶はなく、米国で2番目の輸出量を持つ太平洋北西部に注目が集まっている。
【調査情報部 令和3年9月8日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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