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ケベック州の大規模豚肉処理場で4カ月間以上続いたストライキが終了(カナダ)

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 カナダのケベック州に本社を置く農協系大手食肉パッカーであるオリメル社は2021年8月29日、賃上げを求めてストライキを実施しているバレー・ジャンクション工場の労働組合と基本合意したことを発表した。この合意内容は31日の組合員による投票を経て批准されたことから、4カ月に渡って行われたストライキに終止符が打たれ、同工場は9月3日に稼働が再開された。
 同工場は、カナダ最大規模の食肉パッカーであるオリメル社のケベック州にある豚肉処理工場の一つで、ケベック市南東に位置し、豚を1週間当たり3万7000頭処理する能力を有する。約1100人の従業員を雇用し、日本向けに輸出される冷蔵豚肉の一部もこの工場で製造されている。

ストライキの背景

 労働組合が同年4月19日に提出した賃上げ案にオリメル社の経営が応じず、交渉の場にも現れなかったことから、同工場従業員は4月28日以降ストライキを実施し、4カ月間以上経過した8月末まで続いていた。
 報道によると、同工場が2007年に閉鎖の危機に陥った際、従業員は工場存続のために賃金(38%カット)や年金制度、その他労働条件などで大幅に譲歩した。しかし、それ以降、わずかな賃上げしか行われていないことなどに従業員が不満を募らせていたところ、2021年3月末で6年間の労働協定が終了し、労働協定改定に当たって賃金交渉が再燃したとされる。また、同工場のラインスピードが速いことから負傷率が高いことも相まって、従業員の高い離職率も大きな問題となっており、その解決に賃上げは必須であると組合は主張していた。
 同社は、労働組合の要求する協定初年度に35%、協定終了時には51%となる段階的な賃上げ案に対して、同工場の競争力を弱め、工場存続の危機に陥れるもので受け入れられないとして、これまでの複数回にわたる労使間の交渉は合意に至らなかった。同社は、このままではさらなるストライキの長期化が予想されたため、8月29日までに合意に至らなかった場合、同工場の夕方の勤務シフトを廃止して500人以上の従業員を解雇すると発表していた。
 期限となる29日に基本合意された新たな妥結案に対する組合員による投票が31日に行われ、賛成票が半数以上を占めたことから合意文書が批准され、ストライキが終了した。
 今回合意された新協定(2027年3月までの6年間)では、協定初年度に10%、協定終了時までに26.4%の段階的な賃上げが行われることとなる。

豚肉需給へ及ぼす影響

 カナダの豚の約4分の1がケベック州で処理されており、同州における最大の豚肉処理場がストライキにより稼働停止に追い込まれた。これにより出荷待ちの肥育豚が滞留し、州内の他の処理場や隣のオンタリオ州、さらには米国(特に東部)に振り分けて出荷することとなった。
 母豚価格の上昇などで米国内の豚飼養頭数が減少傾向にある中、ストライキの影響も相まって、直近のカナダから米国に出荷されたと場直行豚は、前年同月を大幅に上回って推移しており、2021年1〜7月の累計で前年同期の2倍を超えた(図)。その結果、米国東部の肥育豚価格(8月下旬の週平均)は、中西部のアイオワ/ミネソタ州の同価格に比べて100ポンド当たり約8米ドル(1キログラム当たり20円:1米ドル=111円)安の差が生じた。
図
 振り分け先の工場の稼働状況に加え、米国の肥育豚価格はカナダより安価であること、長距離の輸送費の問題もあることから、米国やオンタリオ州などの遠方の工場に振り分けることにも限界があり、この問題がさらに長引けば、大規模な豚の殺処分が行われるのではないかという業界の懸念が高まっている状況であった。  現地報道によると、8月30日時点で出荷待ちの豚が17万頭以上に増加していることから、オリメル社は工場再開後も当面の間、他工場への豚の振り分けを継続し、出荷待ちの豚の滞留解消に取り組んでいくとしている。
【河村 侑紀 令和3年9月9日発】
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