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オランダ政府、窒素排出量削減に向け家畜生産権などの買取り等を検討(EU)

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 オランダ環境評価庁(PBL)は9月6日、オランダ政府が計画している窒素排出量削減に向けた政策モデルを分析した報告書を発表した。

 オランダ政府は2020年4月、農業、交通、産業から排出される窒素排出量を削減する一方で、自然環境の強化・回復を目的としたプログラムを発表し、2030年までの総予算として窒素排出削減対策に20億ユーロ(2620億円:1ユーロ=131円)、自然環境の強化・回復に30億ユーロ(3930億円)を計上している。
 今回の報告書は、このプログラムを補完するため、同国の財務省と農業・自然・食品安全省が作成した政策モデルをPBLが分析したものである。この中で今回、オランダ政府が窒素排出量削減に向け、家畜の飼養頭数削減を目的に、農家の生産権および用地の買取りを計画していることが判明した。オランダでは、窒素の排出量の4割は農業由来とされており、中でも飼養密度の高さから畜産部門の削減が求められている(注1)。

 オランダ政府が作成した政策モデルは2つあり、そのうち、窒素排出量削減および土壌への窒素沈着量を減らすことを目的としたモデルでは、乳用牛、豚、家きんの生産権等を30%以上買取ることを目的に、90億ユーロ(1兆1790億円)の予算が必要とされている。
 一方、窒素排出量削減とともに自然環境の強化・回復のための農地利用の拡大を目的としたモデルでは、持続可能な農業を推進する余地のあるエリア、自然環境的に農業を行うことが困難なエリア、自然保護区周辺などのエリアの3つに分け、このうち、自然保護区周辺などのエリア内の乳用牛の生産権等の買取りに要する費用として、80億ユーロ(1兆480億円)の予算が必要とされている。また、持続可能な農業を行うための用地買取り等のための費用として、90億ユーロ(1兆1790億円)の予算が必要としている。

 PBLは、政府が計画している家畜の頭羽数を制限するための政策について、現在は限られた畜種や地域にのみ適用される手法となっているが(注2)、今回の2つのモデルに関しては、どちらも全国的な範囲での畜産農家からの生産権等の買取りという手法に大きく依存しているとした。

 オランダ農業園芸組織連合会(LTO)は9月7日、ホームページを通じ、政府による生産権や用地の強制的な買取りに反対するとし、生産者は法的にあらゆる手段を講じると反対の立場を示した。その一方でLTOは、技術革新、自主的な生産地の移転や廃業によって、窒素排出量の大幅な削減は可能としている。

(注1)畜産の情報2020年2月号「オランダ養豚における家畜排せつ物処理の取り組み〜持続可能な養豚のために〜」

(注2)海外情報「オランダ政府による養豚生産者への廃業支援策で278戸が廃業へ(EU)」
【小林 智也 令和3年9月14日発】
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