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政府目標達成に向け、サトウキビ由来のエタノール生産を推進(インド)

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最終更新日:2021年10月20日

 インド製糖協会(ISMA)は10月1日、インドの砂糖需給動向や見通しなどに関するウェビナーを、翌週(10月8日)には、同国のバイオエタノール生産や政策などに関するウェビナーをそれぞれ開催した。

砂糖需給:2021/22砂糖年度の砂糖生産は前年度同、輸出も高い水準で推移

 ISMAによると、2020/21砂糖年度(10月〜翌9月)の砂糖生産量は、3110万トン(前年度比13.5%増)とかなり大きく増加し、輸出量は過去最高となる710万トン(同20.3%増)に達した(表1)。 2021/22砂糖年度の見通しとして、砂糖生産量は前年度と同程度の3100万トンとしている。また、輸出量は、過去最高となった前年度から15.5%減少するものの、ブラジル産サトウキビの不作などを背景に砂糖の国際価格が堅調である中で、アジア向け輸出を中心に600万トンと、2019/20砂糖年度並みの高水準での推移を見込んでいる。
表1

エタノール生産:エタノール生産の拡大で、砂糖生産の余剰が削減

 インド国内で販売されるガソリンへのエタノール混合率は、エタノール生産設備の新設・拡大を支援する政策(注)などが功を奏して年々上昇しており、ISMAでは、2021/22エタノール年度(12月〜翌11月)には10%に達すると予測している(表2)。こうしたエタノール生産の拡大により、同年度には340万トン相当の砂糖生産が削減されると見込んでいる。

(注)インド政府は、エタノール製造設備の新設や拡張を支援するため、製糖業者向け融資に対する利子補給制度を導入したほか、サトウキビの搾り汁や、砂糖製造工程の2回目の脱水で得られる糖みつ(Bモラセス)のエタノール生産への使用を許可した。詳細は、インドにおける砂糖の生産動向および余剰在庫解消への取り組み|農畜産業振興機構 (alic.go.jp)を参照されたい。
表2

エタノール政策:インド政府、エタノール混合率20%の到達目標を前倒し

 インド政府は従来から、石油輸入量の抑制や自然環境への負荷軽減などを目的に、2030年までにガソリンへのエタノール混合率の20%達成を目標に掲げていた。しかし、2021年6月5日に政府が発表したロードマップ「Roadmap for Ethanol Blending in India 2020−25」では、2023年4月から順次、E20(エタノール混合率20%のガソリン)の供給を開始し、2025年4月までの目標達成を目指すこととしている。
 ISMAは、インドの砂糖生産量は今後も国内需要を上回ると予測されることから、同国の砂糖産業においては砂糖の輸出に加えて、サトウキビ・糖みつ由来のエタノール生産をさらに促進していくことが重要とし、2025年までに砂糖産業部門(サトウキビの搾り汁や糖みつ由来)のエタノール生産量を60〜65億リットルまで拡大する必要があるとしている(表3)。また、エタノール生産拡大に向けた課題として、エタノール貯蔵庫の拡張やガソリンスタンドの整備に加え、輸送に必要な鉄道やパイプラインの建設により、エタノール供給量の地域差の解消(図)などに取り組む必要があるとしている(注) 。なお、本目標が達成されることで、約600万トン相当(2020/21年度生産量の2割程度)の砂糖生産が削減されるとしている。

(注)ISMAによると、サトウキビ・糖みつ由来のエタノールの8割はサトウキビ主産地の3州(ウッタル・プラデーシュ州、マハラシュトラ州、カルナータカ州)で生産されており、主産地から離れた地域へのエタノール輸送が課題となっている。
表3
図
(参考)
【塩原 百合子 令和3年10月20日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9532