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欧州委員会、生乳・乳製品の短期的需給見通しを公表(EU)

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 欧州委員会は2021年10月8日、農畜産物の短期的需給見通し(注)を公表した。今回、このうち生乳・乳製品の概要について紹介する。

(注)欧州委員会は、農畜産物の短期的需給見通しを年3回(晩冬、初夏、初秋)、中期的需給見通しを年1回(12月)公表している。

<生乳生産>

 2021年の生乳出荷量は、前回7月時見通し(前年比0.8%増)から下方修正され、同0.3%増と見込まれている。主要生産国の多くで牧草の生育に適した天候が続いていたにも関わらず、EU南部での高温・乾燥などによる牧草の減少が引き下げの要因となった。22年の生乳出荷量については、例年通りの天候が予測される中で、生乳需要の回復が見込まれることから、同0.6%増と予測されている。
 また、21年の経産牛飼養頭数は、乳用牛のと畜頭数の増加により同0.8%減と見込まれている。一方で、同年の1頭当たり年間乳量は同1.3%増と見込まれているが、飼料価格の上昇によっては、これを下回る可能性もあるとされている。
生乳

<チーズ>

 2021年のチーズ生産量は、前年比1.0%増と見込まれている。1〜7月の生産量は米国向け輸出の回復や中国向け輸出の拡大を受けて前年同期比2%増と好調に推移したものの、今後の域内需要は弱まると予測されている。
 21年のチーズ輸出量は、英国向け、日本向け、韓国向けが減少したものの、米国や中国向けの増加が減少分を上回る形となった。今後は、外食産業が急速に回復する米国向け、また、引き続き中国向け輸出の好調な推移が予想されることから、前年比4.0%増と見込まれている。
 21年のチーズ消費量は、新型コロナウイルス感染症(COVID−19)対策の規制の解除から外食が増えるものの小売での販売減少が予想されており、前回7月時見通し(同1.1%増)から下方修正され、同0.5%の増加が見込まれている。
チーズ

<バター>

 2021年のバター生産量は、1〜7月のチーズ向け生乳の仕向け割合が高かったことが影響し、前回7月時見通し(前年比1.0%増)から下方修正され、同0.1%の増加が見込まれている。
 EU産バターの価格は、生産減などを要因に1〜7月にかけて20.7%上昇した。そのため、国際市場ではEU産バターの競争力が弱まり、21年のバター輸出量は、過去最高となった昨年から同7.0%の減少が見込まれている。
 21年のバター消費量は、チーズと同様に小売の販売減少から、前回7月時見通し(同1.0%増)から下方修正され、同0.6%の増加が見込まれている。
バター

<脱脂粉乳>

 2021年の脱脂粉乳生産量は、1〜7月のチーズ向け生乳の仕向け割合が高かったことが影響し、前回7月時見通し(前年比2.5%増)から下方修正され、同1.0%の増加が見込まれている。
 21年の脱脂粉乳輸出量は、EU産脱脂粉乳価格の上昇が国際競争力を弱めることから、前年同と見込まれている。また、1〜7月の脱脂粉乳輸出量は、最大の輸出先である中国向けを始めに、インドネシア向け、フィリピン向け、イエメン向けが増加した一方で、アルジェリア向け、ナイジェリア向けが減少した。
 21年の脱脂粉乳消費量は、加工用として同0.5%の増加が見込まれている。
脱脂粉乳
 欧州委員会は、COVID−19のワクチン接種の進展により、EU域内での各種規制の緩和から、需要の回復を期待している。しかし、インフレ圧力はより強くなっており、特にエネルギー、原材料、肥料、貨物の価格が2021年上半期に上昇していることから、これらの部門の市場動向について注視していく必要があるとしている。
【小林 智也 令和3年10月25日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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