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生乳生産量、短期的には増産も長期的には不透明か(NZ)

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米農務省、2022年のNZの生乳生産は前年比減も長期的には微増と予測

 米国農務省海外農業局(USDA/FAS)は10月15日、2022年のニュージーランド(NZ)の生乳および乳製品の需給予測を公表した。
 これによると、同年の生乳生産量は前年比0.5%減の2225万トンと予測している(表)。減少の要因としてUSDA/FASは、2014年以降、年率約0.4%増で推移する中、21年は上半期の増産を背景に前年比1.8%増の2237万トンと予測する一方で、22年は通常の生産サイクルに回帰するためとしている。また、今後の生乳生産量に影響を及ぼす可能性のある事項として、影響の程度は不明としながらも、新型コロナウイルス感染症(COVID−19)対策として政府が実施している、事実上の国境封鎖に伴う酪農現場の労働力不足を挙げている。
 22年の主要乳製品の生産量および輸出量については、生乳生産量の減少により全粉乳とチーズは減少すると見込んでいるが、脱脂粉乳とバターは増加すると予測している。USDA/FASは脱脂粉乳について、21年は脱脂粉乳より全粉乳が高価格であるため全粉乳に多くの生乳が仕向けられるが、22年には、需給変化などから価格の逆転が予想されることで、生産量や輸出量が回復するとみている。
表 NZの生乳・乳製品の生産量および輸出量
 さらに、長期的な生乳生産量の見通しとしてUSDA/FASは、飼養頭数および酪農用地がともに減少する可能性があるとしながらも、乳牛1頭当たり乳量の増加などから今後10年間、年率0.5%前後で増加すると予想している。しかしながら、同時に、中長期的な生産量の制限要因として、水質汚染物質の排出制限や温室効果ガス排出に対する課税などの動きを挙げている。

NZ国内では、減産を見通す声も

 一方、USDA/FASの予測とは別に、今後の生乳生産見通しについて厳しい見解もある。
 NZ最大手の乳業メーカーであるフォンテラ社は21年7月、現地報道機関の取材に対し、環境規制等の影響で酪農用地は減少しており、生産性の向上によりある程度相殺できるものの、今後のNZの生乳生産量は横ばいか減少する見通しとコメントしている。さらに、ニュージーランド証券取引所(NZX)も、NZの生乳生産動向等に関する報告書「Dairy Outlook Report 2021」の中で、2030年までにNZの生乳生産量が2020/21年度(6月〜翌5月)比で5%減少する可能性があることについて触れている。
 世界有数の酪農大国で乳製品輸出国であるNZの生乳生産動向は、引き続き乳製品の国際需給にも大きな影響を与えることが予測されるが、COVID−19をはじめとした酪農現場の労働力不足や環境問題など、全世界共通の課題を踏まえた同国の動向が注目されている。
【阿南 小有里 令和3年10月28日発】
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