英国政府は10月20日、ニュージーランド(NZ)と自由貿易協定(FTA)について大筋合意したことを発表し、その内容に関する概要を公開した。
このうち、牛肉については協定発効から11年目に関税を撤廃(それまでの10年間は無税の関税割当枠を設定)し、関税撤廃後の5年間は特別セーフガード措置を導入することとされた。また、チーズやバターについても6年目に関税を撤廃(それまでの5年間は無税の関税割当を設定)することとされた(表1)。これらの措置については、今年6月に合意した英豪FTAの合意内容と同様の措置となっている(注1)。
また、同協定の合意内容の中には、環境や動物福祉に関する項目も含まれている(表2)。
(注1)
海外情報「英国政府、英豪FTAの合意内容の概要を発表」を参照されたい。
英国のジョンソン首相は声明の中で、「この協定締結がニュージーランドとの長い友好関係をさらに強固とし、インド太平洋地域との関係を深化させる。また、英国の企業や消費者に恩恵をもたらし、輸出企業のコストを削減し労働者のアクセスを容易にするなど、英国にとって素晴らしい協定である。そして、将来、国内の産業に10億ポンド(1540億円、1ポンド=154円)(注2)の投資が行われるようになり、両国に経済と環境の好循環をもたらすものである」と述べている。
(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「9月末・月中平均の為替相場」の月末TTS相場。
一方、英国の全英農業者組合(NFU)のバッターズ会長は21日、「同協定は、今年初めに豪州と締結した協定と同様に、英国の酪農、畜産、園芸分野に大きなマイナス面をもたらす可能性がある」と合意に反対の立場を表した。同会長は以下のように具体的理由を示すとともに、NFUがこの協定を支持することは非常に難しいとしている。
(1)英国の生産者への見返りがほとんど担保されない中で、国産農畜産物に求められている動物福祉基準が満たされないNZの食品が輸入される可能性がある
(2)世界で最も輸出志向の強い生産者との対決を求めているにもかかわらず、英国政府は国内の生産者に対し適切な資金投入をしていない
(3)今後の国内農業に対する英国政府の姿勢が明確にされていない