ニュージーランドと英国、FTAで大筋合意 (その2:ニュージーランド側の措置と反応)
ニュージーランド(NZ)政府は10月20日、英国との自由貿易協定(FTA)について、大筋合意したことを発表した。
NZのアーダーン首相は声明の中で、今回の合意における市場アクセスの成果について、「NZがこれまでに締結した貿易協定の中で最も優れたもの」としており、NZ側は全ての物品に対して即時関税撤廃、英国側は97%の物品については即時関税撤廃、残りの物品については関税割当などが設定されている。
NZのオコナー貿易相によると、新型コロナウイルス感染症(COVID−19)感染拡大前において、英国はNZの第7位の貿易相手国であり、2020年3月までの1年間の物品・サービスの双方向貿易額は60億NZドル(4740億円:1NZドル=79円(注1))、うち物品貿易額は32億NZドル(注2)(2528億円)であったとしている。なお、同時期の英国向け牛肉輸出額は616万NZドル(4億8664万円)となっており、バターなどの乳製品も近年では一定量輸出されている(図)。
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の月末TTS相場。
(注2)英国への主な輸出品目は、肉類、ワイン、果物、鶏卵、蜂蜜、羊毛、機械類などで15億NZドル(1185億円)。英国からの主な輸入品目は、車両および関連部品、機械類、医薬品などで17億NZドル(1343億円)。
同大臣は、これらの関税が撤廃された場合、NZの輸出業者は年間約3780万NZドル(29億8620万円)の節減が期待できるとしている。また、COVID−19感染拡大前の試算ではFTA締結によりNZから英国への輸出が最大で40%増加し、NZのGDPは最大で9億7000万NZドル(766億3000万円)の恩恵を受けるとしている。
現地報道によると、今般の合意に対し、同国の財界や農業団体は、歓迎の意を示しているとしている。
主な畜産関係団体などが発表している声明は、以下の通りである。
〇ビーフ&ラムNZ(B+LNZ)およびNZ食肉産業協会(MIA)
本FTAが締結・批准されることで、農家、加工業者、輸出業者、そしてNZ経済が、より大きな輸出収入を得ることができるとして、両団体はそれぞれ評価の意を示している。
B+LNZのマクアイヴァ―最高経営責任者(CEO)は、「イースターやクリスマスなどの繁忙期は、英国の食肉生産のオフシーズンにあたるが、本FTAにより英国の消費者は、年間を通じて最高の食材を手に入れることができる」と述べている。
MIAのカラペワCEOは、関税撤廃までの移行期間の長さに失望したとしながらも、「英国のEU離脱に伴い、(EUによる)NZの牛肉1300トンの割当量は英国とEUで分割され、NZが英国にアクセスできる牛肉は454トンにとどまっていた。この枠外では、NZの牛肉輸出には最大70%の関税が課せられており、枠外取引は事実上行われていなかった。しかし今回、英国へのアクセスが改善されれば、国際的な競争相手と同じ土俵で競争することができる」として、合意内容について評価している。
〇フォンテラ
フォンテラ社のハーレルCEOは、「NZ政府が英国とのFTAの大筋合意に成功したというニュースを歓迎する。英国は、金額ベースで(世界)第2位の乳製品輸入国であり、高い価値観を持つ消費者は、NZ産であること、持続可能性および革新性に対し、対価を払うことを歓迎している」と述べている。
なお、近年NZでは、農業部門などにおける労働力不足が問題となっているが、本FTAとは別に、現行のワーキング・ホリデー制度の拡張・改善に向けた検討を開始するとされており、具体的な内容については、今後両国間で協議が進められるとされている。
【調査情報部 令和3年11月2日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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