生乳取引の透明性等は高まるも、取締強化を示唆(豪州)
豪州競争・消費者委員会(ACCC)
(注1)は11月22日、「酪農業界における行動規範(Dairy code of conduct)
(注2)」について、2021/22年度(7月〜翌6月)の遵守状況に関する見解を公表した。
(注1)日本の公正取引委員会に相当する組織。
(注2)酪農家と乳業メーカーなどの間で交わされる生乳取引の明確性と透明性の向上を目的に2019年12月に制定された連邦規則「Competition and Consumer (Industry Codes—Dairy) Regulations 2019」により規定される行動規範(2020年1月発効)。本規範については、
海外情報「豪州農業省、酪農業界の行動規範を策定、1日1日に発効(豪州)」を参照されたい。
これによると、ACCCは、前年度に比べ今年度の状況はおおむね改善しているが、依然として対処すべき課題が残っているとしている。
具体例として、自社のウェブサイトから標準的な契約書を削除していること(注3)、非独占契約であることを示す契約書案を酪農家に提示しなかったこと、紛争事案の公表(紛争事案が無かったことの公表を含む)が行われなかったことなどを挙げている。
(注3)本規範では、乳業各社などは毎年6月1日午後2時までに、次年度の最低生産者支払乳価などを含む標準的な契約書について、自社のウェブサイトでの公表が義務付けられている。
またACCCは、「個々のコンプライアンス違反が及ぼす影響は軽微かもしれないが、コンプライアンス違反のまん延・常態化により、業界全体の透明性を向上させるという行動規範の目的が果たせなくなる」と述べた上で、2020年1月の規範発効後、既に乳業メーカーなどが本規範下での義務を理解・把握するのに十分な時間が経過しているとし、「今後のコンプライアンス違反においては、強制的な措置を受けるリスクが高まる」として、取り締まりの強化をにじませている。
なお、本規範では規定違反に対し、1件につき2万2200豪ドル(184万2600円、1豪ドル=83円(注4))から6万6600豪ドル(552万7800円)の罰金が科せられるなどの罰則が設けられている。これまで、2021年7月に大手乳業のラクタリス・オーストラリア社が規定違反として連邦裁判所に提訴されたほか、既に複数社が罰金を支払っているとされる。
ラクタリス・オーストラリア社の場合では、2020/21年度の契約時に、ウェブサイト上で標準的な契約書を公表しなかったことや、同社との契約において、生産者による重大な違反がなかった場合でも、同社が一方的に契約を終了できる内容となっていたこと(注5)など複数の違反が挙げられている。
(注4)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の月末TTS相場。
(注5)本規範では、乳業などが一方的に契約を終了できるのは、原則として生産者による重大な契約違反があった場合に限られている。
【阿南 小有里 令和3年12月1日発】
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