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米国農務省が新たに薬剤耐性に関する研究に着手(米国)

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 米国農務省動物衛生検査局(USDA/APHIS)は11月30日、米国のパイプストーン獣医サービス社(パイプストーン社)とともに、養豚農場における抗生物質の使用と薬剤耐性に関する研究を開始すると発表した。本研究は、食糧・農業・研究財団(FFAR)や全米豚肉委員会(NPB)からも資金提供を受けており、抗生物質の使用と薬剤耐性(AMR)を監視するための研究モデルとなり得るものとして注目を集めている。
 
1 USDA/APISおよびパイプストーン社の共同研究
 パイプストーン社は1942年に家畜の診療所として設立され、現在は自社の養豚繁殖農場を運営するほか、家族経営者向けに、経営管理、栄養管理、疾病管理、技術導入、生産主導型の研究など幅広くコンサルタント事業を実施している。同社は顧客サービスの一環として、養豚農場における抗生物質の使用データおよびAMRに関するデータを収集している。
 今般、USDA/APHISによって発表された共同研究では、パイプストーン社が収集したデータをUSDA/APHISの全国動物衛生監視システム(NAHMS)に提供することで、USDA/APHISが行っている研究を補完し、国レベルにおけるAMRの動向を正確に把握・予測するための細菌の遺伝子型や抗生物質への感受性について分析を行う予定である。USDA/APHISは2022年中に分析結果を発表することを目指すとしている。
 
2 直近のUSDA/APHISによる研究
(1)AMRアクションプラン
  米国政府は、1999年に米国疾病予防管理センター(CDC)、米国食品医薬品局(FDA)、米国国立衛生研究所(NIH)を共同議長とする「薬剤耐性に関する省庁間タスクフォース」を立ち上げ、各省庁におけるAMRに関する取組について、議論を続けている。また、2020年には「薬剤耐性菌対策のための国家行動計画(CARB)2020-2025」が策定され、米国政府が5年間かけて行う省庁間で連携した戦略的な行動計画が示された。
  USDAも同タスクフォースのメンバーとしてAMRの課題に対応しており、2014年にはAMRアクションプランを策定した。本計画では、以下の3点を目的としてサーベイランス(調査・監視)、基礎・応用研究を実施し、科学的根拠に基づいて生産現場への情報発信や教育に取り組むこととしている。
 @)家畜への抗生物質の使用方法、使用目的と効果の決定および/またはモデル化
 A)家畜体内、生産環境、食品(食肉)に存在する特定の細菌の抗生物質感受性の監視
 B)家畜および生産環境に起因するAMRを低減するための飼養管理方法、抗生物質使用の代替手段、その他の低減策の確立
(2)AMRパイロットプロジェクト
  USDAは2018年、家畜の生産現場で採取された特定の細菌への抗生物質の感受性の分析・モニタリングを行うAMRパイロットプロジェクトを開始した。同プロジェクト3年目となる2020年は、8種の細菌と8種の動物を分析・モニタリングの対象とし、検査は24州27施設で実施された(図1、2)。
図1
図2
 その結果、家畜から分離される細菌では、AMRはやや減少傾向にあるとされた。しかしながら、牛のMannheimia haemolytica(マンヘミア・ヘモリチカ)などの一部の細菌では、分離株に対する抗生物質の感受性が低下していたこと、3種類以上の抗生物質に耐性を示し、多剤耐性菌の出現率が増加していたことが確認できたという(図3、4)。ただし、USDAは、特定の細菌について、統計学的に有意差があると判断するためには、より多くの検体を収集する必要があると付け加えた。
図3 図4
【調査情報部 令和3年12月8日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9805