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2022年から甘味飲料への課税を開始(イスラエル)

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最終更新日:2021年12月9日

 米国農務省(USDA)は11月15日、イスラエルにおいて、砂糖や果糖などの糖類やその他の甘味料を含む飲料およびその調製に用いられる濃縮果汁などの濃縮物(粉末状のものを含む)などを対象(HSコード20.09、21.06、22.02)に課税する法案が10月20日に可決されたと発表した。この新しい税制は2022年1月1日から施行される予定で、課税額は以下の通りとなっている(表)。
表
 イスラエル保健省によると、この度の糖類やその他の甘味料を含む飲料への課税目的は、糖類の摂取による国民の疾病罹患(りかん)および肥満傾向の低減にあるとしている。同国の糖尿病患者数は約60万人に達し、その数は毎年約2万人のペースで増加している。また、同国における糖尿病罹患率は、社会的・経済的低位の人々の間で特に高いとされ、貧困層の人々の32%が毎日甘味飲料を摂取しているとしている。
 なお、現地報道によると、砂糖よりカロリーの低い代替甘味料を含む飲料も課税の対象とされたことについて、飲料メーカーからは、新税制の課税目的にそぐわないことに加えて、新税制では、糖類を多く含む食品や飲料への警告ラベル表示(注)の対象外となった代替甘味料が課税対象となっているとして、批判の声が上がっている。

(注)イスラエルでは、2020年1月1日から、糖類・ナトリウム(塩分)・飽和脂肪酸の含有量が基準値を超える食品や飲料の容器に、それぞれの成分が過剰に含まれていることを示す警告ラベルの表示が義務化されている。詳細は、2020年1月10日付け海外情報「糖類などを多く含む食品や飲料への警告ラベル表示を義務化」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002583.html)を参照されたい。

 なお、USDAは、輸入原材料の一部も今後課税対象となる上、イスラエルでは既に飲料のプラスチック容器に対するデポジット代が付加されているため、飲料メーカーの負担増加を指摘している。また、同国は砂糖を自国で生産していない砂糖の純輸入国で、主にEUから砂糖を輸入し、米国からも少量を輸入している状況にあるが、課税による飲料の消費変化により、砂糖輸入量が減少するほか、イスラエルにおいてシェアの高い米国産グレープフルーツ果汁やクランベリー果汁などの輸入量も減少する可能性があると予測している(図)。
 
図
 また、11月15日に開かれた同国の財務委員会の公聴会では、代替甘味料を課税対象とするべきか議論されたものの、最終的な結論は先送りされ、飲料メーカーのほか幅広に関係者を参集し、改めて議論を行うこととなった。
【塩原 百合子 令和3年12月9日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9532