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カナダから米国向け生鮮ばれいしょの輸出が一部停止(カナダ)

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最終更新日:2021年12月10日

 カナダ食品検査庁(CFIA)は2021年11月21日、ばれいしょの最大の生産州であるプリンス・エドワード・アイランド(PEI)州産生鮮ばれいしょの米国向け輸出を停止した。
 CFIAは、同年10月1日および14日、カナダ東部に位置するPEI州の2つの農場でジャガイモがんしゅ病菌(英名:potato wart)を検出した。
 ジャガイモがんしゅ病菌は最も深刻な病害虫の一つであり、収穫量などに大きな影響を及ぼす。土壌に侵入した場合、地下塊茎部などにこぶが生じ、また、土壌中で数年以上生存できるため、一度侵入すると根絶に時間を要する。2000年に同州で初めてジャガイモがんしゅ病菌が確認されて以降、同州での検出数は33回に上り、今回はそれに続くものとなる。
 CFIAは、今回の2農場では高レベルのジャガイモがんしゅ病菌が検出されたことから、これまでで最も強力な拡散防止対策が必要であると判断し、21年11月2日に同州産種いもの米国向け輸出を停止した。また、今回の検出結果を受けて、米国農務省(USDA)が拡散リスクに対する懸念の表明およびさらなる対策の強化の要請を通知したことから、上述の通り、CFIAは同年11月21日、同州産生鮮ばれいしょの米国向け輸出も停止することとなった。カナダの生鮮ばれいしょ輸出量のうち同州産が占める割合は約3割と最も多く、米国は、カナダの生鮮ばれいしょの輸出先シェアの9割以上を占めている。
 なお、日本は、植物防疫法で定めた病害虫が発生している国からの生鮮ばれいしょの輸入を原則として禁じており、カナダから生鮮ばれいしょ、種いもは輸入していない。
 カナダ政府は、米国政府と緊密に連携し、輸出再開に向けて取り組むとともに、今回の輸出停止措置で影響を受ける生産者に対して支援する計画を進めている。

USDAの反応

 ヴィルサック農務長官は、今回のカナダの輸出停止措置に感謝しているとの声明を発表した。これは、ジャガイモがんしゅ病菌から米国のばれいしょ生産者を守るために必要な措置であるとし、CFIAと協力してジャガイモがんしゅ病菌の蔓延状況や発生源などを特定し、適切な措置を講じることで、カナダの輸出停止措置を緩和できることを期待しているとした。

PEI州ばれいしょ協会の反応

 PEI州ばれいしょ協会は、今回のCFIAの輸出停止措置に衝撃を受けているとし、直ちにこの措置を撤回するよう求めるとの声明を発表した。また、ジャガイモがんしゅ病菌の拡散防止対策は、すでにCFIAが策定したルールに基づいて実施されており、米国やカナダの他の州などすべての市場で、これまでにPEI州産ばれいしょを起因とするジャガイモがんしゅ病菌の発生は一度もないとした。さらに、10月に検出された2つの農場は、すでにCFIAのルールに基づいて規制を受けていた農場であり、PEI州以外の市場に出荷することができなかったとし、科学的根拠のない貿易制限は不当であるとして、CFIAの対応に不満を述べた。
 加えて、米国では、食料品価格の高騰に直面する中、今回の措置がさらなる価格上昇につながりかねないと米国側の状況を懸念している。また、今回の輸出停止措置で何万トンもの高品質な生鮮ばれいしょが廃棄されることとなり、環境問題にもなりかねず、PEI州のばれいしょ生産者のみならず、州の経済全体に影響を及ぼすことになると警告している。
【河村 侑紀 令和3年12月10日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9805