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母豚の飼育環境の規制強化に係るカリフォルニア州法の施行が迫る(米国)

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 米カリフォルニア州では、鶏や子牛、豚などの飼養スペースなどの飼育環境の改善を求めた州法第12号の完全施行が2022年1月1日に迫っている。同法については、カリフォルニア州以外の養豚生産者への影響も懸念されており、業界団体からの訴訟が繰り返される中、その動向が注目されている。

カリフォルニア州法第12号(California’s Prop.12)

 同法は、アニマルウェルフェアの観点から鶏や子牛、豚などの飼養スペースの改善を目的に2018年に可決された。すでに採卵鶏と子牛については2020年1月から施行されており、採卵鶏の場合、1羽当たり1.5平方フィート(約0.14平方メートル)の広さの鶏舎、子牛の場合、1頭当たり43平方フィート(約4.0平方メートル)の広さが確保されている畜舎で飼育されることが求められており、それを満たさない環境で生産された卵や子牛の肉については、同州での販売が禁止されている。
 豚については2022年1月からの実施が予定されており、母豚1頭当たり24平方フィート(約2.2平方メートル)の広さが確保されている豚舎が必要となり、それを満たさない環境で飼育された母豚から産出され飼育された豚の肉の販売は禁止される。
 同法は、カリフォルニア州食品農業局(The California Department of Food and Agriculture)と同州公衆衛生局(Department of Public Health)が執行の責任を負い、これに違反した販売者は、1000米ドル以下の罰金または180日以下の懲役が課される。
 同法では、他の州で生産されたものであっても、同州で販売されるものはすべて対象となるため、特に養豚への負担が大きい。このため、同法が可決されて以降、豚肉業界団体から同法に対する反対意見が出され、裁判所に提訴されている。
 
※採卵鶏については、さらに2022年1月から巣作りや止まり木などが整備されたフリーケージでの飼養が条件となる。

業界団体の反応

 全米豚肉生産者協議会(NPPC)および全米最大の農業者団体であるアメリカン・ファーム・ビューロー・フェデレーション(AFBF)は、同法が州間商取引に違法に介入しているとし、2019年に南カリフォルニア地方裁判所に、21年7月に米国第9巡回区控訴裁判所にそれぞれ提訴したものの、いずれも棄却されたため、両団体は本年9月に連邦最高裁判所に上告している。NPPCおよびAFBFの請願書によると、カリフォルニア州の豚肉消費量は全米の13%を占めているが、同州内で消費される豚肉の多くが州外から運ばれてくるため、要件を満たすための莫大なコストは、ほとんどが州外の農家負担になると主張している。また、この上告に対し豚肉生産の多いインディアナ州、テキサス州を含む20の州が賛同しており、同年11月に最高裁に提出した書類の中で、第9巡回区裁判所の判決は、州間の経済的な分断を脅かすだけでなく、州の主権が平等であるという基本的な原則を覆すものであると述べている。
 なお、最高裁はすでに、北米食肉協会(NAMI)による同様の上告を21年7月に棄却している。また、今回のNPPCとAFBFの訴訟を審理するかどうかを検討する期日については、まだ定められていない。

カリフォルニア州の反応

 カリフォルニア州政府は12月8日、法12号に対するNPPCおよびAFBFの異議申し立てを却下するよう最高裁に要請した。同州の司法長官は、多くの豚肉生産者と加工業者は、すでに法が施行される際に彼らの製品を販売するための手段を講じているとし、同法が可決される前から、業界はすでに飼育環境の改善に向かっていたと主張している。
 なお、同州は12月17日までの間、同法に係る規則の修正案についてのパブリックコメントを募集している。ただし、この修正は細かなものであり、法施行の期日の変更は予定されていない。
【上村 照子 令和3年12月22日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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