欧州委員会は2021年12月15日、2022年の欧州連合(EU)域内外での農産品プロモーションプログラムの予算として1億8590万ユーロ(241億5027万円:1ユーロ=129.91円(注1))の予算を措置したと発表した(表)。
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の11月末TTS相場。
2022年のプログラムは、欧州委員会が最優先課題として掲げる欧州グリーン・ディール(注2)に貢献するよう、前年と同様に有機産品、果物・野菜、持続可能な農業やアニマルウェルフェアに配慮した農産品に焦点を当てている。また、予算は、1億8290万ユーロ(237億6054万円)と前年からわずかに増加した。
(注2)alicセミナー
「EUの「Farm to Fork(農場から食卓まで)」戦略について〜2030年に向けて、持続可能性(サステナビリティ)を最優先課題とするEU農業・食品部門〜」を参照されたい。
欧州委員会のボイチェホフスキ農業・農村開発担当委員は、「EU農産品の品質と安全性をEU域内外にプロモーションをかけることは、欧州委員会の生産者支援の重要な側面である」と強調した。また、「欧州委員会の農産品プロモーションプログラムは、持続可能な食料システムへの移行に重要な役割を果たしており、有機農業や持続可能な農業に対する認識を高め、健康的およびバランスの良い食生活に欠かせない新鮮な野菜や果物の普及を図ることが目的であるとした。さらに、「より多くの生産者にグリーン・ディールへ参加してもらうためには、EU農産品に対する需要を高める必要がある」と同プログラムの推進を促した。
今回の予算のうち、約半分の8910万ユーロ(115億7500万円。表の※印の項目)は、前年と同様に欧州グリーン・ディールの農業・食品部門の戦略であるFarm to Fork(農場から食卓まで:F2F)戦略(参考)に沿ったものに充てられる。このうち、EU域外向け予算が前年より800万ユーロ(10億3928万円)減少する一方で、EU域内向けが同1100万ユーロ(14億2901万円)増加するなど、域内向けのプロモーションに注力していることがうかがえる。
その他、EU域外向けには、品質や特色ある産品のプロモーションの他、欧州委員会が輸出拡大の可能性を高く見込める市場として、日本、韓国、カナダ、メキシコなどを挙げ、これらの市場に対して優先的にプロモーションを行うとしている。同プログラムを通じて対象国でのEU農産品の競争力と消費を高めると同時に、知名度の向上、EU農産品の市場シェア拡大が期待されている。
同プログラムの具体的なプロモーションの提案の募集は、2022年初頭に予定されており、プロモーション活動を担当する組織については、貿易機関、生産者団体、農業団体などの広範囲の組織が対象となっている。また、提案された内容は、共通農業政策(CAP)、欧州グリーン・ディール、F2F戦略の気候と環境に関する目標、特に生産と消費の持続可能性に関して評価される。