米国穀物協会、トウモロコシ品質報告書を公表(米国)
最終更新日:2021年12月27日
米国穀物協会(USGC)は2021年12月9日、2021年産トウモロコシの品質レポートを公表した。本レポートでは、同年産トウモロコシの収穫時の品質を品質等級、水分含有量、物理的要因、化学組成、マイコトキシン(かび毒)発生の5つの観点から分析し、その結果を広く発信している。特にUSGCは、同年産トウモロコシはレポートの作成と公表を始めた2011年以来、最も良好な作柄であるとした。
2021年産トウモロコシの品質
USGCは2011年から毎年、米国のトウモロコシ生産の主要12州(イリノイ州、インディアナ州、アイオワ州、カンザス州、ケンタッキー州、ミネソタ州、ミズーリ州、ネブラスカ州、ノースダコタ州、オハイオ州、サウスダコタ州、ウィスコンシン州)で採取された検体を用い、品質の分析を行っている(表1、図1)。
品質等級
トウモロコシの品質については、USDAが定める品質等級があり、U.S.No.1からU.S.No.5までの5つの等級に分けられている(表2)。2021年産トウモロコシでは、容積重の平均値が58.3ポンド/ブッシェル、破損粒および異物混入(BCFM)率が0.7%(破損粒率0.6%、異物混入率0.2%)、総損傷率が0.7%となった(図2、3、4)。この結果、90.0%がU.S.No.1の要件を上回り、98.0%がU.S.No.2の要件を上回った(図5)。
平均水分含有率
水分含有率は実際に販売される乾物の量に影響し、乾燥のしやすさや貯蔵性にも影響する重要な指標となる。2021年産トウモロコシの平均水分含有率は16.3%となり、20年産の15.8%より高く、19年産の17.9%よりも低い結果となった(図6)。水分含有率17.0%以上の検体は32.4%であり、カビの発生を抑えるために湿度を低く保つように注意する必要がある。
物理的要因
物理的要因の中でも、硬胚乳の亀裂であるストレスクラックは、破損しやすさ、でんぷん収量の減少、浸漬性への影響などにつながる。2021年産トウモロコシの平均ストレスクラック率5.1%となり、20年産の5.8%、19年産の8.6%よりも低い結果となった(図7)。21年産トウモロコシは子実含水率の低いものが多く、人工乾燥の必要性が減少した結果、ストレスクラック率が低下したものと考えられる。また、トウモロコシの粒の大きさの指標となる百粒重(100粒当たりの重さ)は、乾燥のしやすさや得られるフレーク状トウモロコシの量に影響する。21年産トウモロコシの平均百粒重は35.0グラムとなり、20年産の34.5グラム、19年産の34.6グラムと同程度であった(図8)。
化学組成
トウモロコシの主な化学成分はタンパク質、でんぷん、油分である。飼料変換効率を高めるタンパク質や、脂溶性ビタミンの利用を可能にする油分は、家畜・家きん用飼料として重要である。また、でんぷんは製粉業界やエタノール製造業界にとって重要となる。2021年産トウモロコシの平均化学組成は、タンパク質が8.4%、でんぷんが72.2%、油分が3.8%となった。タンパク質およびでんぷんは20年産のそれぞれ8.5%および72.2%と同程度であったが、油分は19年産の4.1%から低下した20年産の3.9%よりも低い結果となった(図9)。また、2021年産トウモロコシは、20年産と比べて、高タンパク質の検体が少なくなったとされている。
マイコトキシン(かび毒)発生
米国食品医薬品局(FDA)は畜産物(肉、乳)中のマイコトキシンの残留基準を設けている。さらに、当該基準を遵守するため、米国農務省連邦穀物検査局(USDA/FGIS)は穀物中のマイコトキシンの規制基準を設定している(表3〜5)。トウモロコシに関連するマイコトキシンとしては、アフラトキシン、デオキシニバレロール(DON)、フモニシンの3種類が知られる。2021年産トウモロコシは、アフラトキシンが98.9%の検体、DONがすべての検体、フモニシンが97.2%の検体で、FDAのそれぞれの基準値を下回った(図10〜12)。
参考 米国のトウモロコシ総収穫量および1エーカー当たり収穫量
米国農務省(USDA)が同9日に公表した世界農業需給予測(WASDE、2021年11月9日公表)によると、2022年度のトウモロコシ総収穫量は150億6200万ブッシェル(前年比6.7%増)と増加し、過去2番目の収穫量見通しとされた。また、1エーカー当たり収穫量も177.0ブッシェル/エーカー(同3.3%増)と過去最高見通しとされた(表6)。
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