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欧州委員会、豚肉の市場介入措置の発動要請を3回連続で拒否(EU)

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 2021年12月13日に開催された閣僚理事会でチェコ代表部は、欧州豚肉部門の「危機的状況」に対処するため、前々回と前回の閣僚理事会で否定された共通農業政策(CAP)で認められている市場介入措置の発動を欧州委員会に再度要請した。しかし、今回の要請に対し、EUのボイチェホフスキ農業担当委員は、欧州委員会は従来の立場を変更することはないとして、前々回と前回に続き、3回連続で市場介入措置の発動を否定した。

 この要請は、オーストリア、ベルギー、ブルガリア、クロアチア、エストニア、フランス、ギリシャ、ハンガリー、ラトビア、リトアニア、ポーランド、ポルトガル、スロバキアの13カ国から賛同を得たものである。これらの国は、10月と11月に開かれた閣僚理事会でも同様に、欧州委員会による介入措置の発動を要請していた。
 なお、要請を行った加盟国にバラつきがみられる理由として、現地関係者への聞き取りなどによると、国によってはEUレベルの支援の要請ではなく、各国政府による独自支援の要請が検討されている可能性が考えられる。

 チェコから提出された文書では、以下の要因から欧州の豚肉部門が数カ月にわたり非常に深刻な事態に陥っているとしている。
・アフリカ豚熱および新型コロナウイルス感染症(COVID−19)の感染拡大により、EU域内の豚肉需要や輸出が大きく減少
・エネルギーや飼料価格の上昇により、生産者に大きな圧力
・豚枝肉卸売価格が大きく下落し、生産コストを下回る水準

 現地取材に対しチェコ農業省の広報担当者は、欧州委員会からの支援が行われなければ、特に子豚繁殖農家の廃業が加速する恐れがあると主張している。

 直近の12月6日の週の豚枝肉卸売価格は、1キログラム当たり1.32ユーロ(171円:1ユーロ=129.91円(注))であった。これは、COVID−19の影響で暴落した1年前と比較して0.5%高、2016〜20年の5カ年平均と比較して13.0%安となる。また、同週の子豚価格は1頭当たり31ユーロ(4027円)と前年同期比8.5%安、同5カ年平均比30.8%安の水準であった。

(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の11月末TTS相場。

 同委員は、EUの豚肉生産者が直面している「困難な状況」は理解し、2020年の「歴史的高値」から最近急激に下落していることは認めている。一方で、EUの豚肉生産の増加は中国の輸入需要に対応した結果であり、価格の下落は、それが突然「停止」したことにも起因するとして、一時的な要因が大きいと主張した。
 また、同委員は、同価格が直近数週間安定する傾向にあり、「初期段階だが市場回復に向けた明確な兆候」が見られること、「CAPの農村開発プログラムを利用して、加盟国独自の対策を講じることができる」との指摘を行った。

 このような中、ベルギーのブリュッセルでは12月15日、フランドル地方(ベルギー北部のオランダ語圏)の農業団体が、子豚飼育の飼料コストが子豚出荷価格を大幅に上回ったとして、政府による支援要請を目的に200台のトラクターによるデモ行進を行った。また、アイルランド、チェコ、ラトビアなどの国において現状の豚の価格低迷やコスト高騰に不満を訴える報道がみられており、今後EU委員会もしくは加盟国政府に対して、支援を求める声が高まる可能性がある。
【調査情報部 令和3年12月28日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-8527