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アフリカなどの砂糖需要が世界の砂糖消費をけん引

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最終更新日:2022年1月6日

 大手コンサルタント会社であるインフォーマ(Informa)社主催の第11回アフリカ砂糖年次大会が12月7日、8日の両日、オンラインで開催され、各国の製糖企業や調査会社などから今後の砂糖需給見通しなどが報告された。主な報告の概要は以下の通りである。

世界の砂糖消費量は、アジアやアフリカの人口増などで緩やかに増加の見込み

 大会の冒頭、司会進行を務めた大手業界情報誌であるインターナショナル・シュガー・ジャーナルのチュダサマ(Chudasama)氏から、経済協力開発機構(OECD)による世界の砂糖消費量予測が紹介された。これによると、世界の砂糖消費量は人口増加と所得の向上により年1.4%の割合で増加しており、2030年には1億9600万トンに達すると予測されている。また、1人当たりの年間砂糖消費量は、世界平均で見るとわずかな増加に留まるものの、アジアやアフリカといった1人当たりの砂糖消費量が少ない地域の需要が著しく増加することで、世界全体の砂糖消費量の増加に寄与するとされている。
 また、ドイツの調査会社であるリヒト(F.о.Licht)社のユーレンブロック(Uhlenbrock)氏から、1997/98年度(10月〜翌9月)以降の砂糖消費量の推移が報告された。この中で、砂糖の需要は着実に増加したものの、2008年のリーマンショックの影響により、07/08年度以降の数年間は砂糖消費の増加に歯止めがかかったほか、最近では、肥満人口の削減を目的とした政策(糖類を含む飲料への課税など)が複数の国で実施されており、この動きも砂糖消費の伸びを抑制しているとした。しかし21/22〜30/31年度にかけては、人口増加や経済成長が砂糖需要を押し上げ、以前の増加率には及ばないものの緩やかな増加が予測されているとの見解が示された。
表1

東部アフリカでは、供給力不足を背景に製糖工場への投資が必要

 ケニアの調査会社であるコゥコ(Kwolco)社のクォレック(Kwoleck)氏から、アフリカの砂糖産業への投資について説明が行われた。この中で、今後投資を行う場合、東部アフリカ(図1)が最適であるとしている。この要因として同氏は、同地域の砂糖生産量230万トンに対し、現在の砂糖消費量は約550万トンと2倍以上の開きがあることを挙げた。加えて、同地域では、約4億4900万人の人口(注)が、21世紀末までに現在のインドの人口(13億8000万人:2020年時点)を超えると予測されていることなどから、現在進められている製糖工場への投資を考慮しても、生産量と消費量の差は、今後、より拡大するとの見込みを述べた。また、同地域はサトウキビの生育に適しており、圃場(ほじょう)として利用できる広大な土地も残されている上、同地域の砂糖価格はアフリカの南部に比べて高いことも、同氏は投資に最適な要因に挙げている。なお、タンザニアやウガンダなどでは、建設中のものも含め、既にいくつもの製糖工場の建設計画が進められており、砂糖消費の持続的な増加に伴い、製糖工場へのさらなる投資は、今後も必要になるとの見解が示された。
 
(注)国によって時点は異なり、エリトリアは2017年、その他の国は2019年。
図1

北部アフリカおよび中東地域の砂糖需要は今後さらに増加の見込み

 世界的に製糖事業などを行っているウィルマ―・インターナショナル(Wilmar International)社のサラモン(Salamon)氏から、中東および北部アフリカ(MENA)の砂糖需給動向が報告された。これによると、MENAのほとんどの国は砂糖の純輸入国であり、2030年までに砂糖の年間消費量は20年比で280万トンの増加が見込まれている(表2)。また、この10年間でアルジェリア、モロッコ、サウジアラビアなどで精製糖工場の建設や精製能力の拡張が行われ、現在のMENAの精製能力は少なくとも年間1300万トンから1400万トンと推定されるなか(図2)、今後は、砂糖消費の増加に加え、精糖のための粗糖輸入需要の拡大も見込まれている。
表2
図2
【塩原 百合子 令和4年1月6日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9532