農務長官が最初に取り上げた議題は貿易分野であり、現政権の最優先事項の一つは、20年2月に発効し21年末で期限切れとなった米中経済貿易協定第1段階合意(フェーズ1)を含む既存の貿易協定の合意内容を相手国に履行させることだと強調した。また、中国はフェーズ1で合意した米国からの購入目標額を約160億米ドル(1兆8560億円:1米ドル=116円
(注1))下回っており、今後数年間で未達分を補うため、合意内容を完全に履行する必要性についてタイ米国通商代表部(USTR)代表が中国と対話を続けていると話した。さらに、購入目標額以外でも、衛生植物検疫(SPS)措置やその他貿易障壁に関する事項についても完全に履行するよう、中国に働きかけていくとした。
続けて、同長官は、中国以外の国々に対しても市場アクセスの拡大を模索し続けるとしている。インドの米国産豚肉の輸入解禁や、ベトナムのトウモロコシ、小麦、冷凍豚肉の実行最恵国(MFN)税率の引き下げは、こうした米国政府の取り組みの一例であるとし、アジア市場においては中国に集中せずに多様化していくとも述べている。
米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)については、メキシコが米国産生鮮ばれいしょの輸入を再開する予定としており、これは15年間に渡る米国政府の取り組みの成果と強調した。また、その他の成果として、米国の乳製品に対するカナダの輸入関税割当の運用に係る紛争では、カナダの運用が協定違反と裁定され、米国が勝利したことも挙げている
(注2)。同長官は、こうしたUSMCAの履行にも引き続き注力していくとしている。
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2021年12月末TTS相場。
(注2)詳細は、「USMCA紛争解決パネル、カナダの乳製品輸入に係る関税割当の運用を協定違反と裁定(米国、カナダ)|(令和4年1月12日発)」を参照されたい。