畜産業および獣医産業の発展に関する5カ年計画を公表(中国)
中国農業農村部は2021年12月14日、今後の畜産業振興政策の柱となる5カ年計画「全国畜産獣医産業発展計画」(注1)を発表した。これは、21〜25年の経済社会発展計画である「国民経済・社会発展第14次5カ年計画」に沿ったものである。
(注1)「<十四五>全国畜牧獣医行業発展規画」(2021年農牧発37号)を指す。
本計画では、25年までに畜産業の近代化を大きく進めるとしており、4つの発展目標(表1)と主要指標(表2)を掲げている。
主要指標のうち、家畜排せつ物利用率については、唯一、数値達成に責任が伴う「約束性」と位置付けられていることから、今後、中国として特に力を入れて推進していくものとみられる(参考:その他の項目は、見込値であることを示す「予期性」とされている)。
また、重点産業として、畜種ごとに、生産量、自給率、生産額などの数値目標が定められている(表3)。このうち、豚と家きん(肉および卵)を「1兆元級産業」(1兆元=18兆4000億円)、乳を生産する家畜(牛やヤギなど)、肉用牛・肉用羊、飼料および特殊な家畜(注2)の4つを「1000億元級産業」(1000億元=1兆8400億円)とそれぞれ位置付けた上で、これらを畜産業の柱として近代的畜産産業体系を構築していくとしている。
(注2)特殊な家畜としては、ミツバチ、馬、ウサギなどが挙げられている。
さらに、本計画では、上記目標に加え、目標達成に向けた政策の方向性も示されている。
生産段階での政策の方向性として、畜産農家に対するインフラ整備や家畜飼養に関する標準的な技術指導の確立などにより、地域の実情に応じた飼養規模の拡大を推進することなどが示されている。このほか、「約束性」に位置付けられている家畜排せつ物の利用率向上については、家畜排せつ物の堆肥化や液肥貯蔵などの技術モデルのパイロット実証を実施することなどにより、家畜排せつ物の土地への還元を促進することなどが示されている。
また、流通段階での政策の方向性に注目すると、「一定規模以上での飼育・と畜、コールドチェーン(低温物流)、冷蔵販売」という一連の流れを包括的に推進することにより、「家畜(生体)の輸送」から「肉の輸送」への転換を推進し、近代的な畜産物の流通体系を確立することなどが示されている。「肉の輸送」への転換は、これまでも、中国国内でのアフリカ豚熱の感染拡大を受け、アフリカ豚熱発生地域の生体豚の一定区域外への輸送を原則禁止するなど、防疫の観点から進められてきたが、この流れが一層推進されるものとみられる。
今後、本計画に基づき、地方行政部局が、地域ごとの具体的な計画を立案し、実行することとなる。
参考
【阿南小有里 令和4年2月2日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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