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2021年の乳製品小売販売数量、好調な販売を維持(英国)

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 英国農業・園芸開発委員会(AHDB)は2月7日、2021年の英国の乳製品小売販売状況を発表した。これによると、小売販売数量はすべての製品で20年よりわずかに減少したものの、パンデミック前の19年と比較すると増加している。乳製品全体および製品別の概況は次の通りである。

乳製品全体

 乳製品(代替品を除く)の小売販売数量は、前年に比べ1.2%減少した(表)。パンデミック前の19年との比較では6.3%増加している。この要因として、在宅時間の増加に伴う家庭内消費の伸びが挙げられ、消費者も1回当たりの乳製品購入量を増やしている。
 なお、乳製品代替品の販売数量は20年から増加しており、21年は19年と比較して37%増加した。ただし、乳製品全体の販売数量の5%にとどまっている。
表 2021年の乳製品小売販売数量の変化

牛乳および牛乳代替品

 21年に入り、外食産業や一部オフィスへの通勤が再開されたことから、家庭内消費が減少し、牛乳の販売数量は前年に比べ0.8%減少した。牛乳の消費機会として最も回数が多いものはホットドリンク(注:紅茶にいれる牛乳を含む)であり、次いでシリアルとなっている。いずれも前年から減っているが、19年との比較では、牛乳の販売数量は5.8%増加しており、特に低脂肪牛乳の増加が大きく貢献している。家庭での消費機会の増加から、大容量牛乳の販売も好調であり、4パイント(約2.3リットル)入りのものが販売数量増加分の46%を占めている。
 その他、販売数量は少ないものの長期保存が可能なLL牛乳と、フィルター製法牛乳(注:生乳を何層かのフィルターで処理することで、たんぱく質の含有量を増やし、乳糖等の含有量を減らした製品)は、19年に対して2桁の伸びを記録している。乳糖を除去した牛乳の売れ行きも好調で、21年には牛乳販売数量の2%となった。
 また、植物由来原料を用いた牛乳代替品も販売数量を伸ばしており、牛乳および牛乳代替品市場の6%を占めた。牛乳代替品市場で最も割合が高いのはオーツ麦由来製品でその割合は34%となっている。

チーズ

 21年のチーズの小売販売数量は、前年に比べ1.3%減少したが、19年と比較して13.2%増加している。小売販売数量に占めるチェダーチーズの割合は、49%であった。
 小売販売数量のうち、58%が価格競争力のあるスーパーマーケットのプライベートブランド製品となっている。また、スペシャリティーチーズ(注:小規模なチーズ工房で、特別な製法や技術などを用いて生産されたチーズ)とコンチネンタルチーズ(注:ヨーロッパ大陸で伝統的に製造されているモッツァレラなどのチーズ)も19年と比べて27%増加している。特にモッツァレラチーズは、その増加分の半分を占めるなど、好調な販売となっている。

スプレッド類

 21年のバターの小売販売数量は前年に比べ1.8%減少したが、19年と比較して16.5%増加している。デイリースプレッドとマーガリンはスプレッド類の販売数量の4分の3を占めているが、パンデミック前と比較してバターなどとの競争によりその割合は減少している。
 バターは、パンデミック期間中の家庭内調理や菓子作りの増加により販売数量は増加したが、22年に入り減少傾向となっている。パンデミックにより消費者の家計が厳しい状況にあるため、相対的に安価なスプレッドやマーガリン、植物由来の代替品に消費がシフトしているためと考えられる。

生クリーム

 21年の生クリームの小売販売数量は前年に比べ0.5%減少したが、19年と比較して21.2%増加している。生クリームの主な用途はオーブン料理や菓子などの材料としての利用であり、21年はこの用途が需要の57%を占めた。21年は前年に比べ、パンデミック期間中の家庭内の菓子作りブームが沈静化する一方、パイやマフィン生地への利用が増加した。
 一方、ダブルクリーム(脂肪分48%)用途は需要の42%を占めている。家庭でイタリア料理やインド料理を調理する機会が増加し、また、デザートや嗜好品需要が引き続き好調であるためと考えられる。

ヨーグルト

 21年のヨーグルトの小売販売数量は前年に比べ1.6%減少し、19年と比較しても4.3%の増加にとどまった。小売店の販売促進を通じて販売されたヨーグルトは、19年は販売額全体の45%を占めていたが、21年には同36%にまで減少している。販売促進の機会が少なくなったことで、消費者はナショナルブランドから価格の安いスーパーマーケットのプライベートブランドを選ぶ機会が増えている。
 一方、大容器のプレーンタイプの製品は、販売数量が増加している。また、販売数量に占める割合は小さいものの、ヨーグルト飲料も販売量を伸ばしており、前年比11.8%増、19年と比較して27%増となった。

22年の見通し

 乳製品は、消費者の77%が毎日の食事に欠かせないと答えており、21年には99.5%の世帯が毎月購入していると答えるなど、英国消費者にとって極めて重要な食品である。
 22年は規制が緩和されて21年に見られた傾向は弱まりつつも、パンデミック前の19年と比較して小売販売数量は増加して推移すると予測される。一方、パンデミックによる家計の収支の悪化や物価が上昇している状況から、廉価な製品への人気が高まるとみられている。そのような中においても乳製品は、消費者が購入する際、一般の食品に比べて、健康的か、環境にやさしいか、倫理的に生産されたものかといった観点が重視される傾向にあると言われている。

【調査情報部 令和4年2月17日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-8527